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2021.01.05

『平和と命こそ〜憲法九条は世界の宝だ』 日野原重明・宝田明・澤地久枝 (新日本出版社)

Th_41wlqabuol_sx341_bo1204203200_ 日の「ゴジラ」に主演していた宝田明さん、二・二六事件関係でたくさん著書を読ませていただいている澤地久枝さん、そして、残念ながらお亡くなりになりましたが、心より尊敬し、一日一食生活の大先輩であった日野原重明さんによる「平和と命」への讃歌。

 宝田さんは幼少期の満州での体験から、絶対に戦争を起こしてはいけないという信念をお持ちです。だからこそ、ゴジラのテーマを見事に体現されたのですね。

 日野原さんも医師として東京大空襲を体験され、澤地さんも満州での生活や焼け野原となった東京での生活、そして二・二六事件の研究を通して戦争反対、平和を強く訴える立場に立ったと言えます。

 私のような戦後生まれ、それも高度経済成長期の東京で育った者にとっては、時間的な意味だけでなく、遠い昔話でした。

 しかし、出口王仁三郎の研究、そして仲小路彰との出会い、さらに80年後に二・二六事件に直接関わるという奇遇によって、完全に自分ごととして考えるようになりました。これは望外に幸運なことです。

 私も一教師として日々関わっている現代日本の教育は、非常に不可思議なことになっています。すなわち、外見上、システム上、慣習上は今でも軍国主義が横行しているのにも関わらず、教科書の中では戦争について語ることがほとんどないという矛盾。これは大問題です。

 ある意味私の敵である日教組も、言葉の上ではさんざん戦争反対を叫びながら、ほぼ完全な形で軍隊文化を継承している。そして、それが、いじめや体罰、暴言や上意下達、閉鎖的で差別的なシステムなど、現代の教育の問題の原因になっていることに無反省です。

 憲法9条についての論議、攻防も、護憲派も改憲派も本質的なところから目を逸らし、ほとんどが自己満足や自己肯定の手段にさえしてしまっている。

 著者お三人が所属している「九条の会」とも、反対側の安倍政権とも非常に近い関係にある私だからこそ、こういうことが言えるのだと自負しています。私は両方と仲良くしていますし、どちらからも仲良くしていただいていますよ。

 ものすごく上から目線で申し訳ないのですが、両者ともに新しい時代の中で一つ上の次元に進化しなければならないのに、残念ながらそれができないほどに凝り固まった世界になってしまっているのです。それを言向け和すには、まず仲良くなって話を聞いてもらい、そして少しでもいいから変化してもらう。それが私にとっての王道なのです。

 なんか偉そうなことを言ってしまいましたが、馬鹿と言われようが、本気でそう思っていますし、たとえば王仁三郎や仲小路の平和観、戦争観というものを知ってしまったものとしては、ぜひとも彼らが未来に向けて遺した言葉を読んでもらいたいと思っています。そして、その機会を作るべく自らのお役目を果たしていきたいと思っています。

 最後にその象徴として、仲小路彰の憲法9条論の一部を転載しておきます。これが単なる護憲論とは大違いであることは、読んでいただければ分かると思います。

 昭和28年12月発行「地球との対話 16 憲法改正可否に関する具体的問題」より

 今後、日本が自ら防衛し、また阻止しなければならない戦争とは、本質的な意味において、世界的破壊性をもった内外よりする革命であり、第三次世界大戦とは、まさに世界革命勢力の侵入に対する防衛に他ならないであろう。日本は現憲法に規定された旧概念の国家戦争には今後絶対参加する意志はなく、この点現憲法の精神は、日本の決意を示すものとして、そのままなんら変更される必要はないのである。

 (中略)

 この観点に立って平和憲法を考えるときそれは日本の進むべき方向を明示した、むしろ、未来への宣言として考えられるべきものであり、近代国家概念をこえた次の時代に導く最も象徴的、哲学的な最高の理想というべきである。そこには改正されるべきなにものもないであろう。

 (中略)

 それは今後全世界にわたる革命による破壊をもこえて、各国各民族をしてここにまで至らしめねばならない地球の普遍的法の原型となりうるものである。

 それは平面的な憲法改正論の次元をこえたものであり、むしろ平和への最高の道徳律として、さながら聖徳太子の十七条憲法が最高の道徳的規範として、今日にいたるまで少しもその意味を失っていないようにいかなる現実の変貌にも耐えて、今後の人類の方向を導く象徴となるものである。

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