『ジョーカー』 トッド・フィリップス監督作品
一昨日の「パラサイト」からの、この「ジョーカー」。
両作品ともに格差社会をテーマの一つとしていることから、比較されることも多いのではないでしょうか。
好みは分かれるでしょうけれども、私はやはり映画的な深みという意味で、こちら「ジョーカー」の方を高く評価したいと思います。
しかし、「世の喜劇も悲劇も、調和も不調和も皆、『フェイク』によって引き起こされている」というメッセージは似ているとも言えます。
そう、よく言われてるように、この「ジョーカー」の物語自体が誰かの夢や妄想であるということも言えるでしょう。
というか、もともと映画自体が「フェイク」であり「フィクション」であるはずですから、本来そんなことを考えるのも変な話なのですが、この映画の冒頭で示される「狂ってのは、僕か?それとも世間?」からも分かるとおり、私たちが生きている(と思っている)この世の現実が「フェイク」に満ちているし、それ以前にたとえば自分自身が誰かの夢の登場人物に過ぎないかもしれないという、自己の「フィクション」性をつきつけるのが、たしかに「作品」の役目でもあります。
そういう意味では、この映画は非常によく計算され、重層的にこの世の「リアル」を表現しているとも言えます。そのクオリティーは「パラサイト」と比較するまでもなく高い。
バットマンのヴィランの物語としてこの「ジョーカー」を見るのもいいでしょう。善悪が混沌として、いわゆる悪役に共感するのは、日本人としては古くからなじみのある作法です。単純な勧善懲悪が好きなキリスト教国の人たちが、こちら側に近づいてきたのは決して悪いことではありません。
言うまでもなく「鬼滅の刃」の世界的な人気(?)には、そういう歴史的意味合いもあるのです。
まあとにかく、とても丁寧に作られ、さまざまな課題を私たちに投げかけてくれるという意味で、「パラサイト」よりずっといい映画だったと思います。
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