『小早川家の秋』 小津安二郎監督作品
昨日の東スポから、すごい飛躍ですよね。
しかし、アヴァンギャルドという意味では、もしかすると共通点があるかもしれない。
久々にこの映画を観ていたら、映画大好き、そしてお能を学んでいる次女が、「気持ち悪い」と叫びました。
なるほど!たしかに今どきの娘っ子にとって、いろいろな意味で「気持ち悪い」のかもしれません。
そして、その「気持ち悪さ」が、なぜか「気持ち良さ」に変わっていくのが小津映画の不思議です。
あれだけ「つまらない」「眠くなる」と思っていた能の世界にどハマリするくらいですから、おそらく数年後には小津ワールドの囚われ人となっているに違いありません。
何が気持ち悪いのか聞くと、これがなかなか的確なのですよ。
まず、低すぎるアングル。そして、幾何学的に並んだ人物、オブジェ。独特の間。計算され尽くした、しかし一瞬ではわからない挿画的風景。さらにはアグファカラーの不自然な赤。
たしかにそのとおり。それはそれは「気持ち悪い」でしょうね。よくぞ気づいた!
さらに小津慣れしている私でも、この東宝での小津作品と、大映での浮草には、心地よい不自然さ、心地よい気持ち悪さを感じます。そして、この二大異種格闘技戦作品が好きで好きでたまらないのであります。
両作品で主役である中村鴈治郎さんの妙演は言うまでもなく、松竹ではありえない役者陣の、ある種の道場破り的な自己表現が素晴らしすぎます。これは静かなる戦いですよね。
特に、そうだなあ、加東大介さんと森繁久彌さんの老獪な(まだお二人とも若いのですが…)職人芸、そしてクールすぎて短い登場時間ながらインパクトありすぎな宝田明さんかなあ…。もちろん女優陣も素晴らしいですね。
私が生まれる少し前の、古き佳き日本人の姿もまた、今どきの娘にとっては「気持ち悪い」のかもしれません。美しい所作、言葉、佇まい。美しすぎるのでしょう。
とにかく世界に誇る超名作の一つです。死ぬまでに何度でも観ますよ、私は。そして、いつか娘も一緒に見入っていることでしょう。
Amazon 小早川家の秋
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