『パラサイト 半地下の家族』 ポン・ジュノ監督作品
昨日地上波で放送されたものの録画を観ました。
先に劇場で観ていた次女の感想のとおりでした。
後半が雑すぎる。
前半の明るさから後半の暗さへのコントラストで見せる映画はたくさんあります。古くは小津安二郎の「大学は出たけれど」や、ちょっと昔ではロベルト・ベニーニの「ライフ・イズ・ビューティフル」とか。
たとえばその2名作のように、それが名作となるには、はやり後半を丁寧に描き、前半を後半がしっかり回収していくことが必要ですが、この「パラサイト」にはそれが感じられませんでした。
期待や予感に対する回収もないところを見ると、わざと「映画的予定調和」を破壊したのでしょうか。その挑戦がアカデミー賞につながったのなら、一定の評価をしてもいいかと思います。
全編を通じて、バロックから前古典風な音楽が流れています。コントラストを重視することによって、より劇的な表現を追求したバロック音楽から、それさえも予定調和として、疾風怒濤によって破壊しようとした前古典派の流れを汲んでいるのでしょう。
それは父バッハと息子たちの対決のようでもありますが、この映画の中で2ヶ所象徴的に使われているヘンデルのオペラ「ロデリンダ」に注目するのも面白いでしょう。ヘンデルは一般に認識されているよりもずっと先取的かく過激で、自己破壊的な作曲家でもありましたから。
そんなわけで、この映画の終わり近くには、「早く終わらないかな。ロデリンダを久々に全部聴きたいな」と思ってしまったのでありました(苦笑)。
つまり、この映画は、100年後、200年後、300年後にも高く評価される作品ではないなと思った次第です。ちょっと残念でした。
ただ、前半の構成や演出、役者さんたちの演技には見るべきものがたくさんありました。まあ、だからこその残念なのですが。
しいて言うなら、世の喜劇も悲劇も、調和も不調和も皆、「フェイク」によって引き起こされているというメッセージが読み取れたかなあ…。
では、ロデリンダを聴いてみましょう。オリジナル楽器による演奏ではありませんが、解説や対訳がついているので、この動画が良いでしょう。なぜ、この曲がこの映画に使われたのか、その意図がわかる…かもしれません。こっちは映画以上に長いですよ(笑)。
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