『銀幕に愛をこめて』 宝田明・のむみち (筑摩書房)
ぼくはゴジラの同期生
昭和を代表する俳優の一人、宝田明さん。私にとっては、ゴジラはもちろんですが、やはり大好きな小津映画「小早川家の秋」での爽やかな存在感が忘れられません。
この本の冒頭にも書かれているように、壮絶な少年時代を送ったにもかかわらず、それを微塵も感じさせない明るさと、一方でそうした体験が基になっているに違いない教養や品格を感じさせる名優さんですね。
そういう方ですから、本当に多くの映画人に愛されたのですね。この本で語られる俳優さん、女優さん、監督さんらとのエピソードに、そのお人柄がしっかり映し出されています。決して自慢話にはならない謙虚さも良い。
謙虚さ…ばったり出会った、ずっと若いのむみちさんに構成をおまかせしているところにも、それが表れています。
実は、この本を紹介してくれた知り合いも、あるところでばったり宝田さんと出会い、その場で意気投合したとこのこと。そんなオープンなところ、そして人を一瞬で見抜く力にも魅力を感じますね。
どのエピソードも興味深かったのですが、個人的に最も驚いたというか運命を感じたのは、宝田さんのデビュー作が熊谷久虎監督の「かくて自由の鐘はなる」だったということ。
なぜなら、熊谷久虎は仲小路彰の弟子、スメラ学塾で活躍し、義妹の原節子と仲小路をつないだ人物でもあるからです。そして、この本を紹介してくれた知り合いというのは、まさに仲小路彰研究の仲間というか大先輩なのですから。これは運命でしょう。
それにしても、のむみちさんの知識と構成力は素晴らしいですね。この本はいわばオーラル・ヒストリーということになるわけですが、実にいい具合に聞き手であるのむみちさんの解説が挿入されていて分かりやすいし、良いリズム感が生まれており、なるほどこういう本の作り方はいいなと思った次第です。
一人の俳優の人生をなぞるうちに、自然と日本映画史を俯瞰できる。また、戦争と平和についても考えることができる。皆さんにおススメしたい本です。
そうそう、私の中の宝田明さんとして実に強烈で鮮明な記憶については、残念ながら本書には記述がありませんでした。すなわち、NHKで放映されていた伝説のコント番組「サラリーマンNEO」です。Season1から4まで出演されていたと記憶しております。オープニングでのファットボーイ・スリム「ウェポン・オブ・チョイス」の華麗なダンスは忘れられません。久しぶりにDVD観てみようかな。
映画、ミュージカル、テレビ…日本の文化の中心を支えた宝田さん。まだまだお元気でご活躍いただきたく思います。
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