『人間失格 太宰治と3人の女たち』蜷川実花監督・小栗旬主演作品
毎年秋に地元で(なんちゃって)文学講座をやっております。
今まではずっと古典作品を扱ってきましたが、今年初めて近代文学を取り上げます。
というわけで、ここは富士北麓にゆかりの深い太宰治に登場願いましょう。地元の人にしか分からない作品がいくつもありますので、私も楽しみです。
で、久しぶりに太宰ワールドにどっぷり浸かろうと思い、この映画を観ました。
結論から言いましょう。悪くなかった。小栗旬の太宰は思ったより違和感がありませんでした。
3人の女を演じた3人の女優もそれぞれの良さが出ていました。
この映画公開直後逮捕されてしまった沢尻エリカの輝きが格別でしたし、対照的な宮沢りえも良かった。個人的に一番物足りなかったのが二階堂ふみでした。
というか、私の中でのキャラ設定としては、エリカ嬢に山崎富栄役をやってほしかった。そして太田静子役に二階堂ふみ。年齢設定に無理がありますが。
太宰のダメ男ぶりと、ダメ男に惹かれる女たちという構図には、もうすっかり慣れてしまいました。映像作品ほとんど観てますからね。そうそう、私のイチオシは役所広司が太宰役をやったドラマ「グッド・バイ 私が殺した太宰治」です。ちゃんと「5人の女」を描いていますし。最近YouTubeで観られるようになったので探してみて下さい。
役所広司版と比べても物足りなかったのは、やはり役者陣のオーラというか存在感なんですよね。これは最近の若い役者さんたちに共通して感じることです。
その点、沢尻エリカと宮沢りえは良かったのです。やはり、それまでの人生の重みのようなものが画面に表れてしまうのでしょうね。
考えてみれば、エリカ嬢は太宰みたいなところがあった。私の大切な友人はエリカ嬢の元夫なのですが、彼はまさに太宰に対する石原美智子、すなわちこの映画での宮沢りえのように、才能あるパートナーを薬物など様々な誘惑、悪意から救おうとした人物です(何十年後かに映画化できるかも)。
そういうところを通っているから、そして太宰のように結局その献身を裏切って落ちてしまったからこそ、ああいう演技ができたのかもしれませんね。
この、ノンフィクションでありながらフィクショナルな物語を描くにあたって、蜷川監督独特の色彩感覚や映像美、三宅純さんの音楽のあの世っぷりが非常に有効に働いたのは事実であり、その点では今までの作品群よりも、かなり優れていました。
ぶっ壊す…最近の私の口癖ですが、こうやって命がけで家族まで破壊するのは、ちょっと無理です。たしかに太宰にはそれができる強さがありました。ちょっと悔しい。ずるい。嫉妬します。
結論。太宰はずるいけれど、やっぱりイケメンです。言葉がね。
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