『ソニー 「未知情報」への挑戦―科学のニューフロンティアを求めて』 佐古曜一郎 (徳間書店)
先日紹介した「井深大が見た夢―21世紀の「ものさし」はこう変わる!」の続きです。
昭和の偉人たちが妄想し、時の上流に投げ続けた夢たちが、今たしかにここに流れてこようとしています。
それをしっかりキャッチするのが、私たち「(彼らにとっての)未来人」の責務です。
この本の内容とはちょっと離れますが、読みながらふと思ったことがあったので、先に書いておきます。なにしろすぐ忘れてしまう(過去を水に流す)タチなもので。
私の「モノ・コト論」的には、「モノ」は「何か(なんか)」という言葉に翻訳できます。「食べ物」は「食べる何か」ですし、「物忘れ」は「何かを忘れる」こと。「物思い」は「何かを思う」こと。「物悲しい」は「なんか悲しい」ですし、「〜なんだもん(もの)」という終助詞「もの」も、「なんか知らないけど、私の思うように行かなくて」という意味です。「もののけ」も「なんか怪しい存在」ですね。
つまり、具体的な姿は明確ではないが、たしかにそこに「存在」するものということになります。まさに「目に見えないもの」です。音楽のことを古語で「もののね」と言ったのも、楽器や人体のような物体、物質の音という意味ではなく、あくまで「目に見えない波としての音」という意味でしょう。
で、私たち人間は、近代になって「ほしいもの」の「もの」が変わってきてしまったのではないかと思ったのです。
そう、近代人、現代人はその「もの(何か)」により具体性を持たせてしまい、結果として「物質」をほしがるようになってしまった。お金も価値を数値化し物質化したものです。特に人為的に人工的に意図的に作られた物体。仕事(しゴト)によって製作された商品。つまり、ワタクシ的に言うと、私たちは「コト」をほしがるようになってしまったと。
何度も書きますが、私の「モノ・コト論」でのモノとコトは、辞書的な意味と反対になっていますのでご注意を。
では、かつてはどうだったのか。私たちは、それこそお金では買えない、手に取ることのできない、保存したり蓄積したり複製したりできない「モノ」をほしがっていたのではないか。もちろん一部仕事の結果たる「コト」もあったでしょうけれど、基本は「モノ」の方がほしかった。
ソニーがそうした「モノ」を扱う企業である(あった)ことは非常に重要なポイントだと思います。ソニーという社名の由来もラテン語の「音」ですし。
ソニーは「ものづくり」の会社です(でした)。ここでの「ものづくり」の「モノ」とは、単なる製品、商品という意味ではなく、それを通しての音楽的感動や文学的感動をつくる会社だったのです。
その「ものづくり」の延長として、著者が作った「ESPER研究室」があった。それ以前に、井深大と盛田昭夫の未来への夢があった。
コト世界は再現性があります。すなわち複製ができます。大量生産ができます。しかし、モノ世界は一期一会。モノはコトの上位概念ですから、たとえばオーディオ機器やデジタル技術を窮めていくと、結果としてモノ世界の感動につながります。
モノは、この本のタイトルにある「未知情報」とも言いかえられます。逆にコトは「既知情報」。モノは「未来」、コトは「過去」とも言えます。
そんな意味解釈で、私は「21世紀はコトよりモノの時代」と叫び続けてきたのです(アマノジャクでもなんでもないのです)。そして、それをずっと前から技術のフィールドで夢想し実行してきたのがソニーという会社だったわけです。
ようやく時代が追いついたのかもしれません。いや、冒頭に書いたとおり、流れてくるべくして流れてきたのです。上流から。下流(過去)ばかりを見つめていないで、しっかり上流を向いて、彼らの投げたボールを受け取りましょう。
今、私は未来医療器具である「CS60」に関わらせていただいています。この革命的な波動コントローラーを見たら、井深さん、盛田さん、そして佐古さんはどう思うでしょう。
Amazon ソニー 「未知情報」への挑戦
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