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2020.10.10

『シーモアさんと、大人のための人生入門』 イーサン・ホーク監督作品

Th_91rlfhthxl_sx300_ 日のバッハが効果的に登場するこの映画。本当に素晴らしい。何度も何度も観て聴いてしまいます。

 ピアノ弾きのみならず、ぜひ全ての音楽家、いや全ての悩める大人に観ていただきたい。

 最も優れたピアノ教師であるシーモア・バーンスタインが語る、音楽の、そして人生の真理と奥義。

 とっても不遜で、シーモア先生には苦笑されちゃいそうですが、実はこの映画で先生が語っている全ての言葉、私の中にある言葉でもあるのです。

 音楽、人生、教育、戦争…彼の全ての言葉に全てうなずいてしまうのです。そうそう、と。

 音楽にだけ絞っても、演奏、演奏家、作曲、作曲家、楽器、楽譜、解釈、アンサンブル、練習、呼吸、不協和と解決、調和、音楽業界、才能と人格、そして音楽自身の価値と私たちの人生の関係など、本当に多くの「そうそう」がありました。

 

 

 一方で、そうそうと思いながら実践できていない自分に対して、まだまだだなとも思わせてくれる厳しい映画であるとも言えます。

 非常に穏やかな気持ちになる一方で、もっともっと頑張らねば…いや、頑張るんじゃないな、もっと自然に、宇宙に(?)生きなければと。

 わかりやすく言えば、私にはまだお金や名声といった誘惑に負けるところがあるということです。

 監督のイーサン・ホークについては説明するまでもないでしょう。彼自身、役者として映画監督として、つまり表現者、アーティストとして大きな壁にぶつかった時にシーモア先生と出会い、そこでの感動、学びをこうして作品化しました。

 それこそ、金や名誉を省みず作った映画だからこそ、不思議なもので逆に大変魅力的な、長期的に見ればきっと「名作」と言われる作品となったと思います。

 途中語られるグールドのエピソードや、幼児教育に関するところも面白かった。そして、なんと言っても、シーモア先生のピアノ演奏や指導の一端を垣間見ることができるのが最高ですね。飾らぬ、実に素直な音楽がそこにあります。

 特に、昨日紹介したバッハの「ソナティーナ」を自身でピアノ・ソロに編曲したものは、なんとも滋味深く、バロック音楽がどうのこうのとか、バッハがどうのとか、神学的にどうだとか、そういうコトを優に超越したモノ世界ですね。美しいと思います。

 

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