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2020.10.01

『井深大が見た夢―21世紀の「ものさし」はこう変わる!』 佐古 曜一郎 (風雲舎)

Th_51y3twy716l_sx321_bo1204203200_ こ数日の話題の続き。

 ソニーESPER研究室の室長だった佐古曜一郎さんが語る、ソニー創始者井深大。

 非常に興味深い内容でした。

 この本では、「モノから心の時代へ」と語られていますが、それは近代西洋合理主義から東洋医学や東洋哲学への回帰を意味するもので、ワタクシの「モノ・コト論」的に言えば「コトからモノの時代へ」ということになります。

 かつてのソニーが、今ではオカルトとも称されそうな「ESPER研究室」を設立し、主に「気」の研究を始めたのが1991年。そして、井深が亡くなった翌年1998年に研究室は閉鎖され、翌年にもう一人の創始者盛田昭夫が亡くなってからの、ソニーの迷走と凋落は語るまでもありません。

 音響機器やコンピューターの世界でトップを走っていたソニーですから、一面では西洋的な工業技術の最先端を行っていたイメージがありますよね。しかし、かつては一方で非常に東洋的な感覚で開発や経営をしていました。

 それが21世紀に入って経済のグローバリズムに絡め取られて一気にそのパワーを失ってしまったのです。

 佐古さんは、CDや8mmビデオの規格に関するものや、まさに21世紀の技術につながる100にも及ぶ特許を持っているそうです。

 今や、その佐古さんらにソニーは訴えられているとか。発明対価に関する訴訟と聞くと、なんとなく寂しい気持ちになりますね。

 この本では「荘子」がなんども引用されています。まさに人為人工ではなく無為自然を追い求めていた、あるいは無為自然(モノ)が人為人工(コト)を包含していたということなのでしょう。

 副題に「21世紀の『ものさし』はこう変わる!」とありますが、本当にコロナによっていろいろな価値観がガラッと変わる予感がします。

 本当に昭和の偉人たちは、未来をしっかり見据えていましたね。その時バッシングされても、数十年後、数百年後に正しく評価されることを知っていたのでしょう。なにしろ、ちゃんと見えているわけですから、上流の景色が。

 そういえば、盛田昭夫は仲小路彰をサポートするメンバーの一人でした。当然、井深にもその書物が渡っていたことでしょう。そう考えると、この本の中にもなるほどと思えることがたくさんあります。

 そして、井深がこだわったという「幼児教育」。期せずして今、それに関わっている者として、いろいろと考えさせられる内容でした。

 最後にこの本の掉尾の一節を引用しましょう。

 井深の夢を、単なる夢で終わらせるか否かは、百パーセントわれわれの「心」にゆだねられている。

 「夢は実現してこそ『夢』なんだ」

 井深のそんな声が聞こえた。

 

Amazon 井深大が見た夢

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