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2020.09.25

BTS 『Dynamite』

 

 日の模範的バッハから、いきなりBTSです(笑)。

 アジア人として57年ぶりに、全米ビルボード・チャートで1位に輝いたのがこの曲。言うまでもなく、57年前の快挙は坂本九の「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」です。

 私は今のK-POPには、それほど興味はありません。かつては半分面白がって「韓国テクノ」や「ソテジワアイドゥル」のCDを買って聴いたりしていましたが。

 しかし、最近は、娘二人がBTSだけでなく、その他のグループにもキャーキャー言っているので、ついつい聴いてしまう(聴かされてしまう)日々を送っています。

 そうしますと、今の韓国の音楽は、日本のそれと比べると、たしかにアメリカ向けに職人的に作られていることがわかります。好き嫌いは別として、たしかにうまく出来ているし、歌もダンスも日本のアイドルとは比較にならないほどうまい。

 一方のJ-POPは、日本国内のみを市場とするガラパゴス状態にあります。もちろん、それが悪いわけではなく、ガラパゴスオットセイのように(?)特殊な進化を遂げていて、それはそれで価値があるとは思います。しかし、とてもグローバルに受け入れられるものではない。

 今日ちょうどメールマガジンで高城剛さんが指摘していましたように、20世紀末の英国の「クール・ブリタニア」 を、韓国は国策として見事に輸入し、日本は見事に輸入しませんでした。

 その国家ブランディングの有無が、その後20年以上経って、この違いを生んだわけですね。経済的なグローバル戦略としては、完全に勝敗がついてしまいました。

 韓国映画がアカデミー賞を獲ったことも記憶に新しいところ。ソフトだけでなく、電化製品やIT機器などのハードも、いつのまにか韓国や中国の後塵を拝するようになってしまった日本に、ちょっとした淋しさをおぼえるのも事実です。

 しかし、5年後はどうなっているわかりません。こうした国家的な商業主義が長く続くことはありません。

 一方のガラパゴス日本はどうなっていくのでしょう。こちらもあまり明るい材料は見当たりません。

 ただ、一つのヒントとなるのは、それこそ坂本九さんがアメリカの音楽を吸収しながらも、非常に日本的な音楽を日本語でヒットさせたこと、あるいは、仲小路彰の「未来学原論」に刺激されたYMOや山下達郎さんやユーミンらが、無意識的にせよ21世紀のアメリカやヨーロッパを驚かすような音楽を作ったことです。

 今売れる曲を作るのか、はたまたバッハのように数百年残る音楽を作るのか(実際バッハは当時不人気であった)。もちろん、ビートルズのようにその両方を実現する天才もいるわけですが。

 いずれにせよ、ポピュラー音楽の世界は、今大きな壁にぶつかっています。いわゆるコード進行もメロディーも出尽くした感があり、そこから逃れるようにHIP HOPが売れる時代になって久しい。そろそろ「天才」が現われてもいいかなと思いますね。

 音楽もデザインの一つと考えると、その発展の鍵は「違和感」と「慣れ」にあると思います。もちろん「違和感」とは、作り手側のそれではなく、聞き手側のそれです。「慣れ」もそう。どの時代においても、エポックメイキングな表現者は「違和感」という批判にさらされてきたのです。

 BTSに話を戻しますが、彼らに「違和感」があったとすれば、やはりアジア人であるということでしょう。たしかにアメリカ人はそこには「慣れ」ましたね。その業績は素晴らしいと思います。

 ちなみに娘たちはこの快挙に興奮しているのかと思うと、案外冷めていてですね、「まあ、チャートなんて金で操作できる時代だからね。戦略で勝っただけだよ」「昔のビルボードとは違うよ」とのご意見。逆に「坂本九はすごい」と、そちらに感動していました。たしかに(笑)。

 それにしても「上を向いて歩こう」、あの夏の日の航機事故で亡くなったことを考えると、きつい歌詞ですね…。

 

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