『ミッドサマー』 アリ・アスター監督作品
今日は、ドイツ公共放送の取材を受けました。そこで話題になったのことの一つは「集団と個」の問題。
やはり日本とヨーロッパは大きく違います。言うまでもないけれども、日本は「個より集団(共同体)」、ヨーロッパは「集団より個」。
もちろん、そんな簡単に対比できるものではありませんが、今日の対話では、やはりそのコントラストが際立ちました。
欧米の立場から、その問題に深く切り込んだのがこの作品です。
ホラー映画として「怖い」と宣伝されてしまっていますが、いやいや、実際観たら全然怖くないし、気持ち悪くもない。ホラーを期待していた次女は、心からがっかりしていました(笑)。
まあ、ある意味、そうした民俗学的な部分に関して、ウチの家族がいろいろ知りすぎているのかもしれませんが、それにしても、ここで表現されていた「おぞましい(とされる)」習俗は、日本のどこかにかつて存在したもの、そして今でも受け継がれているものばかりでした。
以前書いたように、棄老伝説とエロティシズムということでいえば、まさに「楢山節考」の焼き直し、ただ舞台をスウェーデンにしただけとも言えます。
田舎に都会人が迷い込むという設定も、洋の東西を問わず無数にありますしね。観客をそういう「現代の前近代」に引き込むという意味では、横溝正史のシリーズにも共通する感覚がありました。
というわけで、特に目新しい発見や、衝撃的なシーンはありませんでした(ウチだけか?)。「なんかきれいだったね」という感想は異常なのかなあ。
話をテーマに戻しますと、そう、結局のところ、「現代=個」「前近代=集団(共同体)」ということで、欧米でもやはりそのような問題意識が表面化していることですよね。
先日、フランス人YouTuberと話した時も、そんな話になりました。
欧米から見ると、私たちの「学校」さえも「前近代」に見えるわけです。ただ、面白かったのは、それに対して、フランス人は「ヨーロッパが忘れてしまった大切なモノがそこにある」と言い、ドイツ人は無言で呆れ顔になったことです。
では、友人であるスウェーデン人の日本映画研究者は、この映画についてどのような評価を下すのでしょうか。いやあ、いろいろな国の人たちと文化に語り合うのは、実に楽しいですね。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 日本人は何を考えてきたのか…第9回「大本教 民衆は何を求めたのか」 (NHK Eテレ)(2021.01.19)
- 『小早川家の秋』 小津安二郎監督作品(2021.01.18)
- 『ジョーカー』 トッド・フィリップス監督作品(2021.01.11)
- 『パラサイト 半地下の家族』 ポン・ジュノ監督作品(2021.01.09)
- 『ゴジラ』 本多猪四郎監督作品(2021.01.04)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 日本人は何を考えてきたのか…第9回「大本教 民衆は何を求めたのか」 (NHK Eテレ)(2021.01.19)
- 『小早川家の秋』 小津安二郎監督作品(2021.01.18)
- 今こそ!俺たちの東京スポーツ最強伝説(2021.01.17)
- 『江戸の妖怪革命』 香川雅信 (角川ソフィア文庫)(2021.01.16)
- 『芸術は宗教の母なり~耀盌に見る王仁三郎の世界~』 (出口飛鳥)(2021.01.14)
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 『芸術は宗教の母なり~耀盌に見る王仁三郎の世界~』 (出口飛鳥)(2021.01.14)
- ありがとう寺・ありがとう神社(2021.01.03)
- 雲見浅間神社(2021.01.02)
- 『セカンドID―「本当の自分」に出会う、これからの時代の生き方』 小橋賢児 (きずな出版)(2020.12.23)
- 『異界探訪 パワースポットの最深部に異界への扉があった』 町田宗鳳 (山と渓谷社)(2020.12.22)
「歴史・宗教」カテゴリの記事
- 『「生きる力」としての仏教』 町田宗鳳・上田紀行 (PHP新書)(2021.01.20)
- 日本人は何を考えてきたのか…第9回「大本教 民衆は何を求めたのか」 (NHK Eテレ)(2021.01.19)
- 今こそ!俺たちの東京スポーツ最強伝説(2021.01.17)
- 『江戸の妖怪革命』 香川雅信 (角川ソフィア文庫)(2021.01.16)
- 『聖断 天皇と鈴木貫太郎』 半藤一利 (文春文庫)(2021.01.15)
コメント