無文字社会は劣っているのか
最近売れている自己啓発本を読むと、だいたい「言葉にする」「記録する」ということを重視しています。つまり、ワタクシの哲学からしますと、「コト」化することこそ、願望実現の処方箋のように語られている。
私はそこに強烈な違和感を覚える者でして、近く公開されるラジオ番組でもそのことを話しました。
では「言霊」についてはどう考えるのかと、よく質問されます。「コトタマ」ですね。
「コトタマ」というと、一般には「言葉が持っている不思議な霊力」のように解釈されますが、私は読んで字の如し「コトのエネルギー」と解釈しています。
つまり、「言葉」はあくまで「コトの端(葉)」であって、コト本体ではありません。ですから、本体たる「コト」の「タマ(エネルギー)」とは、単純に「認知・認識・粒子化」のエネルギー、すなわち生命活動のエネルギーだと捉えているのです。
「言葉」はあくまで、コト化の最前線の道具であるだけです。特に「文字」は、その「モノのコト化」を、時空を超えて固定する機能を持っており、それが人類の近代化を支えてきたというのはよくわかりますが、一方で「過去」のコト化の記録であるゆえ、私たちの意識を過去に縛り続ける、すなわち私たちを「時間の川の下流」を見続けるように仕向ける悪影響もあるのです。
逆に言うと、かつての日本のように「文字を持たない」無文字社会では、一部の絵画や記号を除いては、コト化されたものは全て時間の川の流れに従って「今」から遠くなっていくのであり、また、未来への妄想(モノとコトの中間)はどんどん近づいてきて明確化してくるけれど、今ここを通り過ぎるとすぐに過去になってゆきます。
それはある意味では常にリニューアルされている状態「常若」であって、悪いことではないのかもしれません。
近代化された私たちは、「コト(粒子)」を良いことととし、「モノ(波)」を悪いものとします。つまり、「無文字社会」は未開で劣等な社会であると断じてしまうのです。
なぜ、古来日本には文字はなかったのか。なぜ、中国から漢字が輸入されるまで無文字社会だったのか。無文字社会は本当に不幸なのか。そろそろ考え直してもいいのではないでしょうか。
「常若」であるということは、常に未来の情報に対して開かれているということでもあります。私たち近代人が「情報」だと思っているのは、全て過去の「コト」です。Google様がインデックス化しているのも全て過去の情報。というか、インターネットの情報は全て過去の「カス」です。
ちなみに「神代文字」に関しては、近代的な思考(劣等感)による産物であって、新しいものはそれこそ近代になってから、古いものでもせいぜい中世にまでしか遡れないと(国語学を学んだ)私は考えています。
そして、こうして毎日ブログに言葉を記録し続けるお前はどうなんだ?と言われてもしかたないのですが、私自身はまさに書きなぐり、書き散らし、書き下ろしているのであり、推敲のために再読もしませんし、数年後読み返すということもほとんどしません。つまり、記録の意識は全くなく、逆に脳内にいっぱいになる「コト」を「水に流す」ためにやっているのでありました(スミマセン)。
最初の話に戻ります。言葉にしたり、目標を書いたり、数値化したりして得られるのは、目前の(たとえばビジネス上の)利益だけでして、実は巨大な夢や妄想の実現にはつながらないどころか、それを妨害し、阻止しているのでした。
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