バッハ 『平均律クラヴィーア曲集全曲』 ロバート・コスティン(オルガン)
先日紹介したロック系(?)オルガニスト、キャメロン・カーペンターとは対照的な、先生系(実際先生です)オルガニスト、ロバート・コスティンによるバッハの平均律全曲。
本当に模範的で素晴らしい演奏ですね。私の一番キライな演奏スタイルは「中途半端」「意識的に奇をてらう」ですので、ある意味振り切っている両者は好きなのです。
結局、その人の人柄や芸術性がそのまま表現されていればいいわけですよね。自然体が良い。無理はいかんと。
なるほど、ボカロに感動するのも、そういうことか。自然体ですからね。
今までも、オルガンで全曲演奏した録音をいくつか聴いてきました。しかし、どれも途中で飽きてしまっていたんですね。しかし、この先生の演奏は飽きずに全部聴き通せた。
自然な演奏スタイルだけでなく、音色の「普通さ」も原因していますね。そう、この曲集の「奇をてらった」演奏としては、各曲をチェンバロ、オルガン、クラヴィコードで演奏するというようなものがあります。また、オルガンだけの演奏にしても、曲によって音色を変えているものがけっこうあるんですね。
しかし、お聴きになって分かるとおり、ここで先生は実に柔らかい音色で通している。それが逆に飽きない原因なのです。
こうしてオルガンで全曲聴いてみますと、あらためてこの曲集の深さがよくわかります。特にチェンバロやピアノでは表現しきれない「ロングトーン」による多くの不協和音の美しさにしびれます。
そう、作曲者であるバッハの脳内では(たぶん楽器を弾かずに作曲したでしょう)、常に音価どおり音が鳴っていたはずですので。
ちなみに原題である「ふ」の「Wohltemperierte」は「平均律」ではなく「良く調律された」でしょうし、「Klavier」は「鍵盤楽器全般」でしょうから、この演奏のように平均律ではなく、またチェンバロやピアノでなくても、決して「奇をてらった」わけではありませんのであしからず。
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