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2020.08.05

山梨は首都圏?それとも…

Th_img20160428_1 年、夏は秋田(家内の実家)に行くのですが、今年は自粛することにしました。

 ちょうど一昨日、秋田県知事がこんな会見をしました。

お盆帰省 秋田知事「首都圏から」自粛要請

 首都圏…ん?山梨県は首都圏なのか?

 答えから言いますと、「山梨県は首都圏」です。関東7都県に山梨県を加えた8都県が「首都圏」であると正式に定義されています。

 山梨県民的には悪い気はしないのですが、他の都県からすると、「あのクソ田舎が首都圏なんて納得できない!」となるのではないでしょうか(笑)。

 山梨県(甲斐国)は昔から微妙な立ち位置にありました。古く奈良時代には「生黄泉の国」なんて言われて、この世とあの世の境と思われたり(笑)。「かひ」という国名からして「境界」という意味の「峡」の意味だと言われていますし。

 しかし、鎌倉時代には幕府に近くなってちょっと存在感が変わり、江戸時代にたまたま江戸の隣、近代には東京の隣になってから、ますますその立ち位置は微妙になってきました。

 上の地図でもわかるとおり、たしかに一見すると東京の隣ですし、その距離もたとえば栃木や群馬より圧倒的に近い。

 しかし、地理的に見ると、関東平野には属しておらず、「山成し」というだけあって山に囲まれた「田舎」です。関東の人たちからすると、関東に入れたくないでしょうね。

 かと言って、中部地方にも入れてもらえないし、入る気もない。私は静岡の出身、東京育ちの山梨県民ですので、そのあたりの感覚は両方向からよく分かります。

 一方、甲信越と言った場合にも、特に新潟県とはあまりに意識的に遠い。日本語学(方言学)的に言うと、いちおう「なやし方言」というのがあって、すなわち「長野・山梨・静岡」に共通する性質があるのも事実なのですが、特に山梨の郡内地方(富士東部地域)においては、関東方言もかなり混入していて違和感もあります。

 そんな微妙な「境界」の独立国山梨ですが、そこに住む人々の中には、近世から、つまり江戸や東京の隣という意識が出てきてから、「首都圏に入りたい」願望が強くなっていったようです。

 たとえば、雨宮敬次郎ら甲州財閥が、東京や関東圏から山梨への交通ルートの開拓に尽力したこと、近くは金丸信がリニアを山梨に持ってきたことなどはその発露でしょう。

 では、現在、山梨は首都圏に参入できたのかというと、実際は奈良時代とそんなに変わっていないと思うのです。相変わらず微妙な位置で微妙な立場のまま。これはもう地政学的にしかたがないことだと思います。

 逆に言えば、富士山をはじめとする霊山の懐に抱かれた「山成し」は、これからもずっと「生黄泉」の国でいいような気もするわけです。どちらかというと私はそれを望みますし。

 いずれにしても、この豊かな自然と東京の隣という地理的好条件を、いまだ本当の意味でうまく活用しているとは思えません。それをなんとかするのも、私のライフワークの一つですね。

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