浦上燔祭説
長崎原爆忌。
毎年思われるのは、なぜキリストの名の下において、隠れキリシタンの里浦上に原爆が落とされたのかということ。
牧師によって祝福された「ファットマン」は、長崎に投下されたというより、浦上に落とされました。
あの日、第1目標だった小倉が曇天だったため、第2目標の長崎が犠牲になることになったことは周知の事実です。
そこの運命も含めて、浦上に原爆が落ちたのは、神の意思であるという考え方があります。被爆後すぐにその考え方は生まれました。
放射線を研究した医師であり、隠れキリシタンの末裔で自身もキリスト者であった永井隆。彼の唱えたのが「浦上燔祭説」。
「燔祭」とは「ホロコースト=生贄祭」です。つまり、長崎の被爆者は神への生贄であるということです。
クリスチャンでない者からすると「生贄」という概念は受け入れがたく、死者に失礼な考えのように受け取られますが、クリスチャンにとっては「崇高」な「行為」ともなります。
こうした価値転換は、殉教を伴う多くの宗教に見られることです。この原爆に関しても、被害者、加害者双方の悲劇を救う手段、方便としてありえることです。
ですから、この「浦上燔祭説」を単純に否定も肯定もできないわけですが、ただこれを通じて、キリスト教が戦争において果たしてきた役割を思い出すことは重要だと考えます。
もとより、日本にキリスト教がもたらされたのは、スペイン、ポルトガルの植民地政策の結果であり、よく言われる「左手に聖書、右手に銃」というのはまぎれもない事実です。
キリスト教に内在する、そうした「荒魂」の要素が、「和魂」の国日本を舞台に、自己矛盾の中で自己崩壊を起こしていく物語を現出したと考えると、より深い歴史的真実が浮かび上がってきます。
永井隆はこの「燔祭説」だけでなく、原子力の「光」の部分、すなわち科学における原子力のプラスの要素についても強調をしました。それは、ちょうど仲小路彰の考え方にも共通します。これもまたある種の「方便」「価値転換」とも言えますが、日本文化における「荒魂」の意義の上に展開しますと、一般的な感覚とはまた違った真理を見出すきっかけにもなると感じます。
さて最後に、長崎原爆とキリスト教ということでいうと、山梨との関係から「有馬晴信」のことも思い出されます。たしかに「荒魂」が音楽という「和魂」を生むことがありますね。キリスト教とは非常に複雑かつ深い宗教です。
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