バッハ 『前奏曲とフーガ 変ホ短調(嬰ニ短調)BWV 853』
もう30年以上前になりましょうか。当時私はある廃寺に住んでいたのですが、そこになぜか世界的に高名なチェンバロ製作家のデヴィッド・レイさんが一人で遊びにきました。
彼とこの曲の私の演奏を聴きまして、まあお世辞でしょうけれど、「Excellent!」と言ってもらいました…ってホント?って感じですよね。
実はこういうことなんです。
デヴィッド・レイさんが来たのはホントです。今からすると考えられないことですが、ある方の紹介でふらっと遊びに来たんです。
で、当時20代の私は、今以上に古楽にはまっていると同時に、MIDIでいろいろ遊んでいたので、1988年でしょうか、世界で初めて発売されたデジタル・チェンバロであるローランドのC-20をボーナスはたいて買ったんですね。
で、これまた懐かしいローランドのシーケンサーMC-300で半年くらいかけて、この曲を1音1音打ち込みまして、かなりリアルな演奏データを作ってあったのです。
つまり、自分は全く鍵盤が弾けないけれど、この曲はどうしても「こう弾きたい」というのがあって、それを打ち込みで作っちゃったというわけです。
それをレイさんにも聴いてもらったと。考えてみると、なんと図々しいことか(笑)。なにしろ、彼はヒストリカルな楽器にたくさん触れ、そして、演奏家でいえば、あの伝説のスコット・ロスや、日本人でいえば曽根麻矢子さんらと一緒に仕事していたわけですから(!)。
今となっては、そのデータが入っているフロッピーもどこかにいってしまいました。なんか、自分でもどんな演奏だったのか、聴いてみたい気がするんですがね。まあ、若気の至りということで。世界的にかなり恥ずかしいことをしてしまったかなと(笑)。
ま、そんなどうでもいい話はいいとして、この曲、プレリュードもフーガも非常に深い。バッハの名曲の中でも特に優れた作品だと、私は思っています。
ちなみに前奏曲は変ホ短調で、フーガは嬰ニ短調で書かれています。第二巻では嬰ニ短調に統一されており、この曲だけが、このように異名同調の組み合わせになっています。これは単に、フーガは元々ニ短調だったとかいう次元の話ではなく、深い意味があると考えています(結論は出ていませんが)。
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