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2020.08.30

『ピクニック』 ジャン・ルノワール監督作品

Th_71cca5cdrml_ac_ul320_ 象派の巨匠ルノワールの次男、ジャン・ルノワールの名作。

 今日、そのジャンに来日を促した川添紫郎の手紙の原稿を目にする機会がありました。

 結局、ジャンの来日は叶いませんでした。しかしジャンは、フランスで川添の妻であるピアニストの原智恵子や画家の藤田嗣治と交流を持ち、日本への興味は尽きなかったようです。

 言うまでもなく、父ルノワールも日本の絵画、特に浮世絵の影響を受けています。特に色彩の面において、それが顕著でした。

 次男のジャンのこの映画はモノクロですが、不思議ときらびやかな色彩を感じさせます。おそらく、父と同様に「光」を重視したからでしょう。結局、白と黒には全ての色が入っているということです。

 これまた言うまでもなく、モノクロの写真や映画、そしてマンガなどが持つ、無限の可能性というものですね。

 そして、この映画のなんとも切ないストーリーも、そしてこの映画自体の数奇な運命も、どこか能のような象徴性、写実ではないリアリズムを感じさせます。

 それこそ「印象」なのでしょう。そう、息子の映画を鑑賞することによって、父の絵画の見方も変わります。絵に命が吹きこまれ、躍動し、時間が流れ出し、ドラマが生れます。

 そして、その数奇な運命の結果でもある唐突な場面転換や時間の経過が、結果としてですが、功を奏しているようです。何かあの時代の残酷さをも象徴しているある種奇跡的な作品と言えるでしょう。

 たった40分あまりの作品です。その中に、あの時代のフランスの光と影が全て表現されていると言っても過言ではありません。

 そんな時代を生き抜き、そんなジャン・ルノワールと交流のあった日本人たちの知られざる人生を発掘することは、私にとっては実に楽しく感動的なことです。まるで、いくつもの優れた作品を鑑賞するがごとくに。

 そうそう、川添の手紙に『ミカド』という言葉が出てきました。ジャン・ルノワールは天皇に興味を持っていたようですね。

ピクニック公式

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