『海山 たけのおと』 デビット・ネプチューン監督作品
昨日の藤圭子から、ジョン・海山・ネプチューンへ。テーマは和洋昇華と倍音。
いや、和洋昇華は倍音のシステムそのものとも言えましょう。
倍音というのは面白いもので、コト世界的には不協和な倍音が、モノ世界的には「音色」を作ったり、ある種の感情を惹起したりする。一見調和するコトのみ積み重ねても、ちっとも「味わい」がないから面白い。
考えてみると、短調の感情(感傷)というのも、不調和な倍音から生じるのモノです。
いちおう和洋両方の楽器をやってきました。和の方は言うまでもなく、洋の方も倍音の豊富な古楽やら、ディストーションのかかったロックやら、くずし字的なジャズなどを好んできた私は、その倍音世界に格別な「意味」を予感しています。
それは人間や自然そのものの存在システムに通ずる「意味」でありましょう。学校数学のようなシンプルな美しさは、実は表層の出来事であって、「コトを窮めてモノに至る」のが宇宙の本当の摂理。実際、数学や物理の世界も、今やすっかり複雑系に取り込まれています。
この映画の感動的なのは、まさにそうした「コト」と「モノ」によって、この世界が構成されていることに気づかされるからです。それも両者は峻別されているのではなく、すっかり一体化している。
順序としては、次元としては、やはりコトがモノに呑まれていく感じ。それが「もののね」たる日本音楽によって見事に表現されており、それをジョン・海山・ネプチューンの生き様が象徴し、またそれを息子さんのデビットがしっかり記録している。
非常に美しい世界だと思いましたね。こういう美しい世界の構造、システム、作法、風合いのことを「和」というのでしょう。
海山さんは本当にジャンルレスなのですが、個人的には海山さんの尺八と弦楽四重奏の「和」が好きです。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- ロベルタ・マメーリ『ラウンドМ〜モンテヴェルディ・ミーツ・ジャズ』(2024.07.23)
- まなびの杜(富士河口湖町)(2024.07.21)
- リンダ・キャリエール 『リンダ・キャリエール』(2024.07.20)
- グラウプナーのシャコンヌニ長調(2024.07.19)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 全日本プロレス祭 アリーナ立川立飛大会(2024.08.17)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
「自然・科学」カテゴリの記事
- 『大鹿村騒動記』 阪本順治 監督作品(2024.08.11)
- 富士山と八ヶ岳のケンカ(2024.08.10)
- 模擬原爆パンプキン(2024.08.09)
- 日向灘M7.1発生〜南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)(2024.08.08)
- 北海道はでっかいどー(2024.08.04)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- ハイデガーVS道元…哲学と仏教の交差するところに、はじめて立ち現れてきた「真理」とは?(2024.06.03)
- 文字を持たない選択をした縄文人(2024.02.14)
- スコット・ロスのレッスン(2024.01.12)
- AIは「愛」か(2024.01.11)
- Re:Hackshun【目せまゆき&成田山幽輔】安倍さんは、あの解散をどう考える?(チョコレートプラネット チャンネル)(2023.11.21)
コメント