バッハ 『「来ませ、聖霊、主なる神」に基づくファンタジア BWV 651』
J.S. Bach - BWV 651 - Fantasia super: Komm, heiliger Geist
この演奏を聴いた時、あれ?これなんだっけ?と思いました。あまりに残響が多いため、最初テンポもリズムもわからず、ただ「音響の総体」に包まれたような感覚でした。
ペダルにコラールの旋律が出てきて、ようやく「ああ、あれか!」と気づきました(曲名などは出てきませんでしたが)。
そこでもう一段上の気づきがあったのです。なるほど、これがバッハの意図か!と。
当時はほとんどの人がこれを教会で初めて聴いたわけですよね。この豊かすぎる音響の中で初めて。
パイプオルガン自体が、まるで現代のシンセサイザーのように多様な倍音を調合することによって「音響」を作り出す楽器です。そこに加えてこの教会の過度な残響。録音では捕らえきれない倍音の反響もあるでしょう。
当時の聴衆、すなわち信者さんたちは、その未知のモノに一瞬包まれ、まさに天上に導かれるような感覚に陥ったに違いありません。そこに、よく知ったるコラールの旋律…もちろん記憶としての歌詞も再生されるに違いない…という既知のコトが、光の向こうから現れ、そうして天地人がつながる。
多くのコラール前奏曲やコラール幻想曲が、そのような構造と機能を持っていたのでしょう。
バッハ自身は、そこを一つのエンターテインメントと考えていたのかもしれません。自他にとっての。つまり、いかに登場するコラールを予感させないかという挑戦、クイズとしての楽しみですね。
バッハがこれを作曲している時の、あるいは前の、脳みその中を覗いてみたいと思いますね。AIには難しい作業でしょうから。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- マカロニえんぴつ 『星が泳ぐ』(2022.05.17)
- THE BOOM 『島唄』(2022.05.16)
- 笑点神回…木久蔵さん司会回(2022.05.15)
- 『フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集』 ユアン・シェン(クラヴィコード)(2022.05.02)
- NHKスペシャル 『東京ブラックホールⅢ 1989-90魅惑と罪のバブルの宮殿』(2022.05.01)
「歴史・宗教」カテゴリの記事
- マカロニえんぴつ 『星が泳ぐ』(2022.05.17)
- THE BOOM 『島唄』(2022.05.16)
- 出口王仁三郎 「天災と人震」(『惟神の道』より)(2022.05.14)
- ジャンボ鶴田さん23回忌(2022.05.13)
- 『教祖・出口王仁三郎』 城山三郎(その10・完)(2022.05.12)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- 『都道府県別 にっぽんオニ図鑑』 山崎敬子(ぶん)・スズキテツコ(え) (じゃこめてい出版)(2022.04.24)
- 「むすび大学」に出演いたしました。(2022.04.11)
- 映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』 岩間玄監督作品(2022.02.15)
- HARUOMI HOSONO『SAYONARA AMERICA』佐渡岳利監督作品(2022.01.30)
- 『あなたを陰謀論者にする言葉』 雨宮純 (フォレスト2545新書)(2022.01.29)
コメント