バッハ 『「来ませ、聖霊、主なる神」に基づくファンタジア BWV 651』
J.S. Bach - BWV 651 - Fantasia super: Komm, heiliger Geist
この演奏を聴いた時、あれ?これなんだっけ?と思いました。あまりに残響が多いため、最初テンポもリズムもわからず、ただ「音響の総体」に包まれたような感覚でした。
ペダルにコラールの旋律が出てきて、ようやく「ああ、あれか!」と気づきました(曲名などは出てきませんでしたが)。
そこでもう一段上の気づきがあったのです。なるほど、これがバッハの意図か!と。
当時はほとんどの人がこれを教会で初めて聴いたわけですよね。この豊かすぎる音響の中で初めて。
パイプオルガン自体が、まるで現代のシンセサイザーのように多様な倍音を調合することによって「音響」を作り出す楽器です。そこに加えてこの教会の過度な残響。録音では捕らえきれない倍音の反響もあるでしょう。
当時の聴衆、すなわち信者さんたちは、その未知のモノに一瞬包まれ、まさに天上に導かれるような感覚に陥ったに違いありません。そこに、よく知ったるコラールの旋律…もちろん記憶としての歌詞も再生されるに違いない…という既知のコトが、光の向こうから現れ、そうして天地人がつながる。
多くのコラール前奏曲やコラール幻想曲が、そのような構造と機能を持っていたのでしょう。
バッハ自身は、そこを一つのエンターテインメントと考えていたのかもしれません。自他にとっての。つまり、いかに登場するコラールを予感させないかという挑戦、クイズとしての楽しみですね。
バッハがこれを作曲している時の、あるいは前の、脳みその中を覗いてみたいと思いますね。AIには難しい作業でしょうから。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- ロベルタ・マメーリ『ラウンドМ〜モンテヴェルディ・ミーツ・ジャズ』(2024.07.23)
- まなびの杜(富士河口湖町)(2024.07.21)
- リンダ・キャリエール 『リンダ・キャリエール』(2024.07.20)
- グラウプナーのシャコンヌニ長調(2024.07.19)
「歴史・宗教」カテゴリの記事
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- 【厳秘】大戦終末に関する帝国政府声明の骨子(その3)(2024.08.15)
- 【厳秘】大戦終末に関する帝国政府声明の骨子(その2)(2024.08.14)
- 【厳秘】大戦終末に関する帝国政府声明の骨子(その1)(2024.08.13)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- ハイデガーVS道元…哲学と仏教の交差するところに、はじめて立ち現れてきた「真理」とは?(2024.06.03)
- 文字を持たない選択をした縄文人(2024.02.14)
- スコット・ロスのレッスン(2024.01.12)
- AIは「愛」か(2024.01.11)
- Re:Hackshun【目せまゆき&成田山幽輔】安倍さんは、あの解散をどう考える?(チョコレートプラネット チャンネル)(2023.11.21)
コメント