『イチロー・インタビューズ 激闘の軌跡 2000-2019』 石田雄太 (文藝春秋)
これも間違いなくロゴスではなく「レンマ」だよなあ。
コトを窮めてモノに至る。これをスポーツの中で体現して見せてくれたイチロー。彼の言葉は禅僧のそれのようだと、何度か書いてきました。その集大成。読み応えあり。
第1章で、自らを評して「理屈で話を進めていくタイプ…理屈で理解させてくれないと、消化不良になってしまう」と語っています。
しかし、そうした細部へのこだわり(コト)が、結果として総体(モノ)を理屈ではなく瞬時に捉え、コントロールするきっかけになっている。意識が無意識を生む。
まさに職人、何かを「モノにした」人間ですね。そして、最終的に「モノになった」。
うん、日本語は面白い。日本人は面白い。
メジャーという「世界」の「総体」だからこそ、日本という「細部」が際立って見えましたね。イチローのそうした歴史的、文化的功績は多大です。
「僕の言葉にウソはない」。言葉それ自体は元々フィクションですが、それがこれだけ集積して絡み合うと、そこに真理が立ち上がってくるから興味深い。
しかし、私たち、イチロー自身でない人間にとっては、決してイチローの体感、体得した真理には到達できません。予感までです。だから、「ウソはない」という言葉を否定することは絶対にできないわけですね。
そう、真理、つまり「まコト」は結局他者たる非我たる「モノ」だというのが、お釈迦様の究極の気づきであったわけで、そんな点からも、イチローレベルの賢者らの言が、どこか禅問答チックになるのは当然だと首肯されるのでした。
ベースボールが輸入され、軍隊文化とともに日本化、日本的組織化、職人技化された「野球」が、その故郷に帰って大旋風を起こし、その風景を変えてしまったというのは、世界史上の様々な文化が輸入され、日本化され、そして逆輸出されていくに違いないという、仲小路彰が総体として捉えた日本の歴史的存在意義を象徴しています。
そして、やっぱり「野球」は面白い。奇跡のスポーツ、いや文化です。何度も書いた記憶がありますが、この宇宙に、サッカーやバレーボールやテニスや格闘技に似たスポーツは、それこそ星の数ほどありますが、野球のような、様々な意味で不公平で不均等かつ、確率論的に絶妙なゲーム性を持つスポーツは、実はありません。宇宙人の私が言うのですから、間違いありません(笑)。
うん、やっぱりこの本もまた、私のバイブルですね。
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