『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』 矢部宏治 (講談社現代新書)
アメリカによる支配はなぜつづくのか?
社会にとっての「三密」と、個人にとっての「三密」の話を昨日書きました。
では、国家にとっての「密」とはなんなのか。
密談、密約、密殺、密偵、密輸、密売、密謀…どうも三つでは収まりそうもありません。
この本では、特に「密約」がクローズアップされています。日米間の密約です。
先日、二日続けてオンライン・サロン的なものをやりましたが、そこで私は「日本は敗戦国である」ことを強調しました。その事実は残念であり、思わず目や耳を塞ぎたくなるのもわかります。しかし、その基本に立脚しないと、ここのところの様々な問題、たとえば検察庁法や種苗法の改訂の問題などは正しく理解できません。
どうも、そういう事実を忘れてしまうというか、あえて意識しないというのが、日本人の得意技のようですね。
「密約」も、陰謀と同じように、明らかになってしまっては全然「密」ではないはずです。実際、アメリカの公文書公開によって、たくさんの「密約」が白日の下に晒されましたが、それでもまだ日本人にとっては「密」のままなようです。
この本でも、実にご丁寧にその「密」を「顕」にしてくれていますが、おそらくそれを意識するのは国民の数%にしかすぎないでしょう。
いや、私はそれを嘆いているのではありません。ここまで多くの日本人が「密」を「密」のままにするのには、何か意味があるのではないかと。
実はそれが「国譲り」の作法だとも思うのです。
というのは、ここに挙げられている「密約」にも、それこそ裏で密に関わっていると思われる、黒幕(というのは憚られますが)仲小路彰の存在とその思想、哲学を知っているからです。
大東亜戦争(太平洋戦争)は日本の勝利であった(我等斯ク勝テリ)と書き残し、戦後、(敗戦国として)アメリカに利用されているように見せかけながら、実はアメリカを利用して復興を果たすべく日本を導いた仲小路。
凡人には理解できない、いや認知すらできない、奥深く複雑な未来的政策は、結果として見事に機能し、20世紀後半の日本の繁栄を実現しました。
そのシナリオの基本には、日本人の特質である「国譲り」の思想と作法があると感じます。世界史と日本史を全て知りつくした仲小路なら、そのような「密謀」を考えついても不思議ではありません。
この本の前作、『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』もそうでしたが、たしかに「知ってはいけない」ものなのかもしれません。表面的に筆者の意図を見れば「知るべき」「知らなくてはいけない」になるはずです。しかし、意識的にか、無意識的にか、「知ってはいけない」としたのは、実は大正解なのかもしれませんね。
しかし、たしかに時代は変わってます。仲小路の未来学が構想した(21世紀的な意味での)グローバリズムは、20世紀的な価値観ではとても理解できるものではありません。
ということは、21世紀に生きる、いや22世紀にも生きるかもしれない私たちは、この「密約」を知った上で、それを嘆くだけでなく、そこに新たな意味を創造し、次なる物語を紡いでいかねばならないのでしょう。
追伸…今日も学校の上空を米軍の貨物機数機が我が物顔で超低空飛行していきました。最近その数が多いのはどういうわけでしょう。
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