『恋するトマト』 南部英夫 監督・大地康雄 企画 脚本 製作総指揮 主演作品
今日も秀逸な邦画を1本。
大地康雄さんが八面六臂の活躍をしているこの映画。大地さんの自然体かつ深みのある演技だけでも見ものですが、やはりそのストーリーというか、メッセージが心を打ちますね。
最近の私のテーマの一つが「農業」。意外に思われるかもしれませんが、私は真剣に「農業の工業化」のことを考えています。
たとえばこの映画が伝えたい農業とは、まさに「土と水と太陽、そしてあなた」ということになり、一見私の目指す「ポリマーシートとLEDとAI」のような世界とは対極にあるように感じられるでしょうね。
しかし、「リアルな対面」でしか成り立たないと思っていた「学校」「教育」が、このコロナ禍のおかげで、実はそうばかりではなかったということが分かってしまったように、「農業」に対する私たちの信仰にも近い先入観も実は「幻想」なのかもしれないのです。
この映画では、もちろん単なる「幻想」のみが描かれているのではなく、その「現実」…ストーリーの端緒となる「嫁不足」等々…についても雄弁に語っています。
一見、ハッピーエンドのようですが、結局外国から嫁をとるという意味では、根本的には何も解決していないとも言えるのです。
その他、ジャパゆきさんや買春ツアー、結婚詐欺の問題など、けっこう重いテーマをリアルに描いていますよね。
ラストシーンに涙しながらも、ちょっと複雑な気持ちにならざるを得ないところこそ、大地康雄さんが伝えたかった「現実」なのだと思います。
ところで、話を戻しますが、現在の「現実」の「農業」は、「幻想」とはかけ離れています。ある意味、工業化が究極まで進んでいるとも言えます。機械化、農薬、遺伝子組み換え…。いや、それ以前に、私たちが郷愁をそそられる農村の風景は、決して「自然」なものではありません。
家内の実家も秋田の農家ですが、秋田に行って感じるのは、実は自然ではありません。見渡す限り見事に区画された田んぼ、その背景に広がる見事に植林された山々。それはある種の「不自然」なのでした。
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