ボブ・ファン・アスペレン 『バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 24番 ロ短調』
今日公開された新しい動画。思わず何度も聴いて(見て)しまいました。
バッハの鍵盤作品の中でも特に素晴らしいものの一つである、この前奏曲とフーガ。平均律クラヴィーア曲集の最終曲であり、いかにもそれらしい重厚な作風となっています。
トリオ・ソナタ風な前奏曲。このウォーキング・ベースとその上に絡みぶつかり合う2声の総体は、まるで宇宙の構造を表しているかのようです。人類の生み出した最も美しく、深淵な音楽の一つでありましょう。
そして、古楽界の重鎮、大ベテランのボブ・ファン・アスペレンさんの演奏がまた素晴らしい。そう、まず上の解説動画が興味深いですよね。やはり、もう人間の意識の領域を超えた世界なのでしょう。だから謎であり、魅力的なのです。
さらに続くフーガの異様なことと言ったら…。いっちゃってますよね、あちらに。やはりバッハは宇宙と交信していたのか。いや宇宙人だったのか。
有名な「12音」全て使うテーマ。それをどう演奏するか、これは人間には悩みですが、アスペレンさんの解釈には、思わず鳥肌が立ちました。機械的に弾くしかないと思っていましたが、このように人間的に弾くこともできるんだ!
そこから展開する、ある意味自由な対位法によるあり得ない和声の連続。不協和音とかそういうことではなくて、倍音まで含めて、人間の意識を超えて無意識の領域まで刺激します。だから、なんだか不自然に聞こえるし、最初は美しく感じない。しかし、感化され共鳴するうちに、だんだんその深奥に足を踏み入れる快感が…あぶない、あぶない。
私、個人的に、この長大かつ難解なフーガの、いやこの深すぎる曲集の最後の最後が、あまりにあっさり終わってしまうことに、ちょっと違和感があったのですが、いや、これ、こうして「あれ?これで終わり?」で終わることに意味があるのだと気づきました。
そう、危ないんですよ。このままこちら側に帰ってこれなくなるかもしれない。だから、まるで「活を入れる」かのように、ハッと目覚めさせるために、あっさり終わったのではないかと。
その前に、あの美しいブリッジのパッセージで、少しこちら側に戻ってくるんですよね。すごい。バッハ自身もヤバいと思ったのでしょう。
はたしてバッハ自身はどんな演奏をしたのか。たしかに気になりますね。
ああ、とにかく死ななくて良かった(笑)。
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