『花筐 HANAGATAMI』 大林宣彦監督作品
昨日の「カメラを止めるな!リモート大作戦!」とは対照的な作品を鑑賞。これまたやられました。想像をはるかに超えた感動。
対照的と書きましたが、一般的な映画の文法を逸脱しているという意味では共通しているのかもしれません。
両作品とも好き嫌いが分かれるでしょうね。特にこの作品は「リアル」をどこに求めるかで賛否が分かれるでしょう。
余命宣告を受けた、まさにその時に制作された作品です。テーマも「命」。
実はこの作品については、2週間ほど前に一度紹介しています。
まだ観てもいないのに、なんだか知ったような書き方ですね(苦笑)。そこにも予告編を貼りましたが、今日はロングバージョンを。
3時間近い作品です。しかし、あっという間でした。いきなり冒頭から大林監督の夢の中に引き込まれ、目が覚めたら3時間経っていたという感じ。
そう、これは「夢」ですね。黒澤監督の「夢」と同じ感覚。夢をこうして一つの作品に仕上げられる人は、そうそういません。
もう一つの言い方をすれば、これは「走馬灯」。命の果てがそこに迫った時に見える「走馬灯」。それを一つの作品に編集してしまう、これは本当に稀有な才能です。
ちょっと冷静に、その「夢」「走馬灯」を見てみると(実際、夢の中でそういう時ってありますよね)、そのすさまじい技術とセンスに驚かされます。
いや、「夢」や「走馬灯」って、絶対不自然なのに自然に受け入れられるじゃないですか。それを「映画」でやってしまった。これは本当にすごい。
寺山修司的だと感じた瞬間も多々ありましたが、寺山のそれは「不自然」なままなんです。それが狙いなので。しかし、これは妙に「自然」だった。自分も死ぬんじゃないかと思ってしまった。これは本当は怖い映画なのかもしれません。究極のホラーなのかも。
そういう意味では、やはりデビュー作の「HOUSE」に近いモノを感じましたね。
音楽の効果も見事でした。
ちょうど今、上の娘がベースでバッハの無伴奏チェロ・ソナタを練習しており、下の娘が能の稽古をしておりますので、まさにそれが融合した世界だったのでびっくり。そこにまた、民謡やお囃子や軍歌や唱歌、そして無調性的なピアノの音が重なる。しかし、それがなぜか「自然」。やはり夢の世界での音楽なのでしょう。
「リアル」には大きく分けて二つあります。西洋的なリアルと日本的なリアルと言ってもいいし、科学的リアルと脳内リアルと言ってもいい。
日本の、たとえば能や歌舞伎や浮世絵は脳内リアルを極めようとしました。その衝撃が写実中心だったヨーロッパ芸術に、印象派やキュビズムを生んだのでした。
そういう意味では、この映画は「能」であり「浮世絵」ですね。ストーリー的な因果関係でなく総体として意味を象徴していますし。
これは何度も観たい作品です。一つ一つのカットが、写真のように脳裏に焼き付きました。記憶って静止画なんですね。それを想像力(創造力)で補完して動画として再生しているのか。
いやあ、本当に観ていただきたい。不戦の映画とも捉えられるでしょうし、監督もそう考えていたかもしれませんが、もっともっと大きなテーマを抱く作品になってしまいましたね。おススメです。
Amazon 花筐 HANAGATAMI
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