追悼 津島園子さん
昨日の大林宣彦監督が、肺がんが発覚したのち撮影した「花筐」。原作は檀一雄です。檀ふみさんのお父さんですね。
檀一雄は山梨県都留市出身。檀一雄と太宰治はまさに盟友。仕事でも遊びでも放蕩でも。
「花筐」は檀の処女作品集。昭和12年発行ですから、太宰と出会って数年経っています。昭和13年には、太宰は檀との放蕩生活の反省から(?)、井伏鱒二のいる山梨県御坂峠に「疎開」いや「修行」に来ます。そこでやはり都留市で教員をしていた石原美智子と出会い、のちに結婚。そして、昭和17年でしょうか、長女の園子さんが生まれています。
その津島園子さんが亡くなりました。園子さんは山梨に何回もいらしています。御坂峠の記念碑の除幕式、天上山(カチカチ山)の記念碑の除幕式、また県立文学館で開かれた「太宰治展」、妹の「津島佑子展」にもおいでになっていました。なにかと山梨に縁の深い方です。
私の最も好きな太宰作品の一つである「お伽草紙」に、防空壕の中で園子さんにお話を聞かせるシーンがありますが、それは三鷹での東京の空襲の記憶ととにも、疎開先である甲府空襲の記憶も重なっていることでしょう。
特に「カチカチ山」の内容と執筆時期を考えますと、同作での防空壕のシーンは甲府空襲のそれである可能性が高いと、私は思っています。
このたび訃報で園子さんの写真が紹介されていましたが、たしかに太宰によく似ていますね。「カチカチ山」の冒頭にこんな記述があります。
私の家の五歳の娘は、器量も父に似て頗るまづいが、頭脳もまた不幸にも父に似て、へんなところがあるやうだ。私が防空壕の中で、このカチカチ山の絵本を読んでやつたら、
「狸さん、可哀想ね。」
と意外な事を口走つた。
たしかに器量は似ていたかもしれません。頭脳は…どうなんでしょう。園子さんは、のちに厚生大臣を2期務める津島雄二と昭和39年パリで結婚しています。昭和41年にパリで長男淳が誕生。淳さんは現在自民党所属の衆議院議員です。つまり、頭脳も父に似て優秀だったということでしょう。
太宰を直接知る方々がどんどん亡くなっていきますね。当たり前と言えば当たり前ですが、こうしてまた昭和が遠くなっていきます。自分の半生もこうして歴史になっていくのだなあと感じます。
ご冥福をお祈りします。お父様やお母様、妹さんと楽しい思い出話をしてください。
青空文庫 「お伽草紙」
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