『BU・SU』 市川準監督・富田靖子主演作品
久しぶりに鑑賞し、感動に打たれて眠れなくなってしまいました。まじで。自分でもびっくり。
公開の翌年でしたか、テレビで放映されたの観まして、その頃はけっこう日本映画を観まくっていた時期なのですが、どういうわけかあまりピンとこなかったんですね。
それが、どういうわけでしょう、30年以上経ってこの歳になって観たら、ドはまりしてしまった…。
その後の市川作品を観て、市川ワールドを満喫したからでしょうか。それとも私自身の変化なのか。もう冒頭の東京へ出てくる流れだけで、ガーンと頭をひっぱたかれてしまいました。
そうか、これって映画というより「能」みたいな感じ?ワンカットごとに、たとえば多用されているスローモーションやストップモーション、望遠効果など、西洋的なリアリズムを超えた脳内リアリズムの表現だと思えば非常に自然です。
当時はリアルタイムの東京の風景だったはずです。実は未来の記憶、思い出の東京だったのですね。時間も空間も自由に伸縮し美化され誇大になっている。これこそ映画的リアリズムでしょう。ノスタルジーではない、もっと普遍的な「切なさ」に満ちあふれています。人生も青春も大いに切ない。大切なものなのです。
そういう意味では実験映画だったのかもしれません。若かりしワタクシにはそういう観点がなかったのでしょう。
それにしても、この富田靖子の美しさはなんでしょう。「BU・SU」な性格までが美しい。思い通りにならないストーリーまでもが美しい。これぞ「もののあはれ」。
当時は売れっ子CMディレクターが映画を撮ったと評されましたが、その後の映画監督としての活躍を考えれば、そういう見方は間違っていたということでしょう。ご本人の弁が興味深い。
本当に全てのカットが印象的でした。計算され尽くしているとも言えるけれども、とっても感覚的とも言える。感覚に計算させているというか。
やっぱり内館牧子さんの脚本もうまいのかなあ。語りすぎず。
そして、そういうシーンがどんどん堆積していって、あのエンディングだからなあ。笑顔もセリフもほとんどない展開からのこれは反則でしょう。オリジナルの原由子の歌もとってもいいのですが、最近ショパンが続いているので、この動画もいいなあ。泣ける。やばい。この映画に再会できたことに感謝。毎日でも観たい。
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