『BANANA DIARY』吉本ばなな (幻冬舎)
昨日のエリーさんと同じく、昨年末の「宇宙人忘年会」においでくださった吉本ばななさん。
その時ばななさんからいただいたのが、このダイアリー。
2020年3月から2021年4月まで使えるものでしたので、ようやく使う季節になりました。
使い始める前の2ヶ月間も放置していたわけではありません。いろいろなところに散りばめられている「ばなな語録」や、アートをパラパラと眺めるだけでも充分楽しい。
そして、そんな時間に夢見るのは、ここにどんな自分の未来が書き込まれて、そして過去の記録になっていくのだろうということ。
それだけでも、とっても意義深い。そんな助走を経て、いよいよ始まった「今」は、なんとコロナ一色。まさかこんな未来が来るなんて…。
いつまでコロナ色で塗り尽くされるのてしょうかね。それを想像するのも楽しい。東京オリンピックがこのあたりにあるはずだったのに…なんて考えるのも一興。楽しみは先延ばしになった方がいいのかも、とポジティブな思いも湧いてきます。
それにしても、このダイアリーのいいところは、やはり自分のものではない「言葉」や「絵」が先にあるということでしょう。
どうしても「日記」というものは、「自分」でいっぱいになってしまいがちです。たとえば、以前、真っ白な文庫本(マイブック)を買って、自分史を小説仕立てにしようかと思ったことがありましたが、なんと2ページでやめました(笑)。無理でした。
考えてみれば、毎日の生活というのは自分だけで成り立っているのではありません。いろいろな想定外の他者や自然の中に自分があるからこそ、様々な彩りが生まれるわけですね。
その点、このダイアリーは、すでにそこに「世界」があって、そこに自分を立たせたり、歩かせたり、笑わせたり、怒らせたりできるわけで、そこにはある種の安心というものもあるわけです。
また、自分にだけ目が行きがちな「日記」と違って、客観的に自分を見ることができますし、たまたま出会った言葉や色や模様から、ふと慰められたり、諭されたりすることもあるわけです。
散りばめられた言葉たちが、決して罫線に従うことなく、自然に存在しているところは、まさに予想外にばったり出会ったように感じさせるから、また面白い。
美しい海や森や宇宙のようにデザインされたページは、文字を書くことを拒否する場合もあります。だからこそ、ふと絵を書いたり、線をひいたり、写真を貼り付けたり、レシートを貼り付けたりできる。
自然と、とても立体的な「ハイパー日記」になってゆくのです。そして、1年経った時、そこには世界で一つの「物語」が完成する。なんとも素敵な世界ですね。
ばななさん、ありがとうございました。ばななさんらしい、さりげない思いやりのある「物語のキャンパス」です。
Amazon ばななダイアリー
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