川添象郎 『昭和の天才・仲小路彰との出会い』
昨日はタモリ本を紹介しました。今日は団塊の世代向けの本から。タモリは正確にいうと団塊の世代ではないのかもしれません。終戦の日の1週間後に生まれていますから。
この「団塊パンチ」、団塊の世代向けと書きましたが、実際購入していたのは、おそらく私のような「団塊の世代に憧れる次の世代」ではないでしょうか。
この団塊パンチに、川添象郎さんの「回想録・象の記憶」という実に興味深い連載があります。川添象郎さんについては、このパンチの中ではこのように紹介されています。
川添象郎
1946(昭和16)年東京麻布生まれ。クリエイティブ・プロデューサー。旧華族で戦後の国際文化交流に広く貢献した川添浩史、国際的なコンサートピアニスト・原智恵子の間に長男として生まれる。曾祖父は後藤象二郎。高校卒業後、1964(昭和39)年渡米。帰国後、ミュージカル「ヘアー」プロデュースほか、音楽や演劇を中心に数々のプロデュース、プロモートをおこなう。村井邦彦らとアルファ・レコードをつくり、「ニューミュージック」という新しいマーケットを開拓、約1500万枚のレコードを売る。荒井(松任谷)由実、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の育ての親。現在、ヒップホップの大物新人「SOULJA」プロジェクトを07年春に向けて進行中。
う〜む、すごい。ニューミュージックとしてはサーカス、そして、まさに今「未来的音楽」として本国アメリカで大人気の「シティー・ポップ」(山下達郎や竹内まりや)、その後で言うなら、尾崎豊、青山テルマなどを世に出した人です。あっそうそう、昨日の「タモリ」もアルファからレコード出したんですよね。あと、フュージョンのカシオペアとか。もうすごすぎて…。
ちなみに SoulJa と言えば、今のK-POPの世界的隆盛にもかなり噛んでいるんですよね。いち早く韓国の音楽シーンの先進性に気づき、日本の芸能界しっかりしろ!みたいなことをもう10年以上も前から言っていました。
さて、そんな天才(鬼才)川添象郎さんのお父さんが、仲小路彰の右腕的存在だった川添浩史(紫郎)なのです。あの「キャンティ」の創始者。
というわけで、仲小路彰に関する、象郎さんの貴重な証言がこの「団塊パンチ3」の「象の記憶」に書かれているので、該当部分を紹介したいと思います。なかなか実体のつかみにくい仲小路彰(象郎さんは「なかこおじあきら」とルビを振っています)を、実に的確に表現している文章だと思います。
今もお元気な(腕白な?)象郎さんにもお会いしないとなあ…。では、どうぞ。
昭和の天才・仲小路彰との出会い
親父は戦前に、仲小路彰という在野の学者と知遇を得て、その思想に傾倒した。
そして親父は、ヨーロッパにおけるファシズムの台頭に戦争の始まりを予感し、大戦勃発の寸前に、パリでの遊学を切り上げ、母と共に帰国。知遇を得た仲小路先生の推挙で、高松宮殿下の国際関係特別秘書官に任じられたらしい。
仲小路先生は、なんと、全世界がナショナリズムの真っ只中の時代に、すでに地球時代(今で言うグローバリズム)の到来が人類の未来の必然であることを提唱し、研究をしていた。おそらく世界で最初のグローバリズムの概念を掲げた未来学者といえる人物ではないだろうか。
僕は子供時分に親父に連れられて仲小路先生にお会いし、まるで神話に出てくる仙人のごとき風貌と、厚いレンズの眼鏡の奥からのぞく、先生の限りない慈愛に満ちた眼差しを忘れることが出来ない。
その後、僕の人生の転機に、親父はいつもなにか用事を作って、僕を仲小路先生の研究所に使いに出した。先生のお宅に着くと、まず、かならず食事をお手伝いの方が用意してくれていた。
食事が済むと、ニコニコしながら先生が現われ、
「象郎さんは、元気ですね…最近は、どうしていますか? お話ししましょうね」
と、いろいろなことを尋ねてくださる。
「人にとって、対話ほど大事なことはありません。人と人との対話、国と国との対話、人と自然との対話、そして、地球との対話……まず、相手のお話をよーく聞いてください……そうしたら、自分も心よりお話することが出来ます」
「対立は破壊を生み出します。宗教も、思想も、哲学も、人種概念も、経済も、対話の心を持たなければ対立を作ってしまいます。
人類の文明は、これまでは、ホモ・サピエンス(思考する人間)の時代でした。
二一世紀からは、ホモ・ファーベル(創造する人間)として、国の概念や、民族的こだわりを超えて、地球文明時代をかたち創らねばなりません。
宇宙から見える地球には、世界地図にある、国を分ける線は見えません。
人間が、勝手に線引きをしている時代は、もう終わりました」
一九六八年に伺ったときには、
「象郎さん……共産主義社会は、その原理自体が内包している経済的矛盾により、今世紀中に必ず、崩壊します」
と、予言のごとく言明されたことを鮮明に記憶している。
そして、そのとおりに、ベルリンの壁は、約十数年後に消失した。
一神教的文明時代の限界も、これを超えなければ人類の未来は創り出せないことを情熱的にお話ししていただいたことも、僕は決して忘れない。
旧制五高の同窓生であった、戦後最長の内閣総理大臣・佐藤栄作も、在野にありながら聡明で純粋な仲小路先生を畏敬し、「日本のあるべき未来像」に関してのアドバイスを受けに、先生が居住し、研究所としていた山中湖まで何度も訪れている。
一九六九年に、僕が「ヘアー」というロック・ミュージカルをプロデュースしていたとき、のちに世界的に活躍したテクノポップバンド・YMOのリーダーである細野晴臣君を、仲小路先生に紹介したことがある。
彼は、一度の出会いで、先生の精神的気高さに打たれ、「生涯で最も影響を受けた人」と述懐している。
仲小路先生は、東大の学生時代、すでに英語、ドイツ語、ラテン語、フランス語、アラビア語、ロシア語に精通し、哲学書・歴史書・地理学・民族学・科学・芸術書などを原語で読破、各民族の特性を研究した上で、日本人とその歴史を客観的に把握し、独自の地球未来学と日本人の果たすべき役割を説いていた。
驚くべきことに、戦前、すでに現在の地球環境問題、サイバネティクス社会までも視野に入れた、時代をはるかに超えた研究をしている。
仲小路彰先生の著作は、膨大な数である。全42巻のシリーズ『世界興廃大戦史』ほか、一人の人間が著作したものとは到底思えない。
生涯で六〇〇から七〇〇近い作曲をしたといわれるモーツァルトのようである。
仲小路彰先生の未来への視点がダイジェスト的にまとめられた『未来学原論ー21世紀の地球との対話』という著作は、僕の人生のバイブル、僕の「核」となっている。
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