『きみの鳥はうたえる』 三宅唱監督作品(+この窓は君のもの)
夕食後、チャンネルを回していてたまたま始まったので、家族で鑑賞。
結果として、家族3人すっかり集中してしまいました。いやあ、これは名作だ。
今、家にいない大学生の長女は、ぜったい「なにこれ?つまんない!」というでしょう。それ以前に、5分と観ていられないと思います。
そういう人が半分くらいいるんじゃないでしょうか。そういう人たちの方がたぶん普通で、私たち3人がおかしいのかもしれません。まあ、家内はちょうど中間くらいの立場かな(鑑賞中いろいろ質問してきましたが、その観点がちょっと…笑)。
たぶん、映画を観なれている、特に邦画を好んで観る私と次女は、こういう「言葉にならないモノ」を空間と時間で表した作品が大好きなのだと思います。二人とも「能」が好きですし。
ストーリーもほとんどなく、セリフよりも無音の時間が長く、ただ淡々と若者のひと夏を描いていく。大きなうねりもないし、結末も「答え」が全く示されない。
ハリウッド的な映画を期待している人にとっては、正直いらいらしてしまう作品でしょうね。
ひと夏の青春を…と言えば、「この窓は君のもの」を思い出しましたね。あれも妙に切なくて好きだった。おっとYouTubeに上がってる!ビデオもDVDもないから(中古ビデオが7万円!)、これはぜひ観ておいてください(こちら)。
「きみの鳥」と「この窓」の違いをあえて挙げれば、役者の演技の巧拙でしょう。はっきり言ってそこは両極端です。しかし、表現されているモノは一緒という、そこが芸術の面白いところです。
「きみの鳥」はなんと言っても、柄本佑、石橋静河という両サラブレッドと、染谷将太という孤高の天才の三人の素晴らしすぎる演技(演技というにはあまりに自然体)。他の役者さんも含めて、「演技バトル」を観るだけでも価値があります。セリフではなく、行動でもなく、視線だけで言葉にならないモノを表現できる彼ら本当にすごい。
特に、今回は石橋静河だなあ。お父さん石橋凌のように見える瞬間もあるし、お母さん原田美枝子さんに見える瞬間もありました。もちろん彼女自身である瞬間が一番多く、また素晴らしかったのですが。
映像も美しい。映像も自然体。街も自然体。名もない人びとの名もない日常が、彼らにとっては最もドラマチックであるという真実。そして、そこには何かわからない共通体験や共通感情というモノがあって、そこに共感する私たちがいる。これって音楽と一緒ですよ。言葉(コト)を超えていますよ。
「この窓」は、役者も映像も完全にシロウトっぽい。しかし、それでも共感を呼ぶ何か(モノ)が示されています。
やはり、この両作品を並べて観るのが良いと思います。勇気のない(やさしすぎる)男たちと奔放な女。「この窓」を見つけてしまったので、私もさっそく並べてみます。
あっ蛇足になりますが、アニメなんかほとんど観ない私が、たまたまテレビで銀魂を観ていましたら、なんと突然「この窓は君のもの」と!銀魂観てる人の中に、何人その映画のパロディ(オマージュ)だってわかった人いたのでしょう。そんなスタッフの遊び心に感動して、しばらく銀魂観てました(笑)。
追伸…あとで分かったのですが、なななんと!柄本佑さん、この「この窓は君のもの」を「古厩監督の過激青春映画です。MYバイブル的な1本」と言って推薦していたんですね!あまりに偶然(必然)でびっくりしました。
あまりにもピンポイントでマニアック。やっぱり感じた「モノ」は確かだったんだ。ちょっと感動。
Amazon きみの鳥はうたえる
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