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2020.01.02

松任谷由実 『ノーサイド』

 

 月二日にして、いきなり去年の話に戻ります(笑)。

 一昨日の紅白歌合戦、いろいろと見どころ聞きどころがあったわけですが、楽曲的にあらためて衝撃を受けたのが、この「ノーサイド」でした。

 今まであまり気にしたことがなかったのですが、この曲のコード進行、とんでもないですね。天才の仕業ですよ。

 松任谷正隆さんのイントロがクリストファー・クロスだ(?)というのは、まあいいとして、そこから歌への入りでまず考えられないことが起きていますね。

 コード進行をこちらで確認しながらお聞きください。

 この曲の基底となる調性はC(ハ長調)です。しかしイントロの入りもメロディーの入りもDmというコードです。実はこのDmというコードがこの曲全体を支配していると言ってもよい。CなのにDm。ここがミソ(なのにミソの音は排除される)。

 DmのドミナントであるAが効果的に使われているのももちろん、Dmを強く規定するFの音に♯がついて浮遊感を与える(プチ5度上転調する)ところもユーミンらしい。

 冒頭の同じメロディーが随所で繰り返されるのですが、微妙にコード進行を変えているあたりは正隆さんのアイデアでしょうか。いろいろな可能性に挑戦していますよね。

 かと思うと、サビはなんとF(ヘ長調)という5度下の調に転調してしまう(もちろんDmの呪縛でもある)。サビで5度下げるという荒業は、ビートルズのヘイ・ジュードの手法ですね。サビの最後には見事にCに戻るのですが、またそれをいきなりAに持っていって、またDmという不思議な世界に私たちを引き戻してしまう。

 歌の最後はちゃんとCの音で終わっていますが、そこにイントロのDmが重なって、結果としてCの音は落ち着きどころをなくしてしまう。帰るところがないんですね。

 ノーサイドという表面的には大団円なテーマの向こう側にある、決してきれい事ではすまされない悲しみというか、虚しさが、実にうまく表現されていると言えるでしょう。どこか納得いかない不安定な転調の連続とも言えます。一言で言えば「青春」。

 そうした本体のストーリーを予感させるのが、ニューヨーク・シティ・セレナーデ風のあのイントロということになりましょうか。お見事。こんな曲、今の誰に作れるのでしょうか。やはりユーミンは天才です。

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