令和
昨日、中学校の推薦入試がありました。
いつものように、私は国語の問題担当。そして、いつものように問題の本文を自分で書きます(その方がいろいろな意味で楽だし、楽しいから)。
今年もできたてのホヤホヤの問題を解いてもらいました。いつものように、その本文を公開いたします。
実際の問題は空欄や傍線がたくさんあります。教科書体の「令」で印刷した部分は、ここでは「(教科書体の令)」と表示します。
「令和」
あけましておめでとうございます。令和二年が始まりましたね。
昨年の富士学苑中学校の推薦入試の問題では「平成」について書きました。今年は「令和」という年号をもとにいっしょに学んでいきましょう。
昨年四月一日、新しい年号「令和」が発表されました。「令和」と書かれた額を菅官房長官がかかげた様子を、テレビで見た人も多いのではないでしょうか。
「令和」という年号は、奈良時代に成立した和歌集「万葉集」の中のある文章から二つの漢字をとって作られました。
英語で「ビューティフル・ハーモニー」と訳されたように、「美しい調和」という意味だと言います。「れいわ」という音の響きもいいですね。
ところで、菅さんがかかげた「令和」の字を見て、なんだか変だなと思った人はいませんか。そう、「令」という字が、なんとなく見慣れない形をしていると感じた人がいるはずです。 実は、教科書の活字や手書きの文字の場合、ほとんどが最後の二画をカタカナの「マ」のように書きます。つまり、「(教科書体の令)」と書くのですね。
しかし、発表された字は、筆で書かれていたのに最後の画をまっすぐ縦に下ろす形になっていました。
ちなみに今、この文章を書いているパソコンで「れい」と打つと、「令」という形の字になります。これは、今ここで使っている書体(フォント)が「明朝体」というものだからです。
漢字はもともと中国で使われていた文字です。中国には長い歴史がある上に、たくさんの国が入り乱れていた時代も長いので、その時代や地方によって、文字の形にもいろいろな個性が生まれました。それらをその時々に輸入して使ったため、日本にもいろいろな漢字の字体が生まれてしまいました。
それを印刷などで使う活字にする時、明朝体では「令」、教科書体では「(教科書体の令)」としたというわけです。
ですから、「令」と「令」、どちらも正解であって、発表された手書きの字が「令」になっていてもまちがいではありません。
ただ今回、「(教科書体の令)」ではなく「令」という字体で発表されたことによって、私は大切なことに気づかされました。そのことについてお話しましょう。
「令」という漢字を使った熟語として、最初に頭に浮かぶのは「命令」ではないでしょうか。実はこの「命令」には「令」が二つふくまれています。わかりますか。
そう、「命」という字の中に「令」があるのです。ちがう言い方をすれば、「令」に「口」を加えたものが「命」ということになります。
ここで「令」や「命」という漢字がどのように生まれたかを調べてみましょう。そうすることによって、大切なことが浮かび上がってきます。 「令」はもともと、冠をかぶった人がひざまずいている様子を表していました。身なりと姿勢と心を整え、神様からのお告げを聞いている姿です。それをシンプルにして文字にしたのが「令」というわけです。
一方、「命」はというと、「令」の中にいる人が、さらにしっかり神様からのメッセージを受け止めるために器を持っている姿だと言われています。「口」は「くち」ではなくて「うつわ」なのですね。
さて、みなさんには、ここで大切なことに気づいてほしいと思います。
「命」も「令」も、もともとは神様のお告げを聞く私たちの姿…そして、その神様からのお告げを受けた私たちが「いのち」そのものなのです。
これをまとめると、次のようになります。
神様からのメッセージを聞く私たち=令=命=いのち
「命令」というと、だれかに指図されている、やらされているようで、なにかいやなイメージがあるかもしれませんが、もともと私たちの「いのち」そのものが、神様から与えられた「使命」であり、大切な意味を持つものなのです。
このように学んでくると、「令和」という年号にも新しい意味を見出すことができますね。
令=命なのですから、「令和」は意味の上では「命和」と書きかえることができます。つまり、「令和」とは、私たちの命が調和する時代と言えるかもしれません。
それぞれが与えられた命をしっかり輝かせ、それらが音楽の和音のように響き合う時代…そんなすばらしい時代が令和だと考えてみてください。なにか明るい希望の光が見えてきますね。
昨年の問題文に『「平成」とは、「デコボコを削り落としてできあがる」、「平和・公平・平等を私たちの意志で完成させる」という意味だ』と書きました。その「平成」の時代から「令和」の時代へ、私たちの挑戦は続いていきます。
みなさんも、平和を完成させ、それぞれの「命」を「調和」させる人になれるように、富士学苑中学、高校でがんばって勉強をしてほしいと思います。
勉強は自分のためにするものではなく、世の中のためにするものだと、きっと神様はみなさんにメッセージを送っていると思います。
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