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2019.12.28

自動作曲システム 『ORPHEUS』

Th_topm NHKの「ドラえもん50周年 みんなみんなかなえてくれる♪ ひみつ道具と科学」をご覧になりましたか?

 あらためて藤子・F・不二雄さんの素晴らしさを痛感しましたね。どれだけ未来夢想力があったのかと。

 テクノロジーのおかげで、その「夢」の一部は実現しつつあるという番組でした。中でも私が興味を持ったのは、「メロディーお玉」を実現した「ORPHEUS」です。

 西洋近代音楽のシステムは、たとえば日本の伝統音楽に比べると非常に機械的(限定的)です。西洋近代科学ととにも、というか同じものとして発達したから、テクノロジーによってそれを自動化することは比較的容易です。

 その研究をしているのが、番組でもユニークな存在感を示していた嵯峨山茂樹さんです。嵯峨山さんの自動作曲システムの面白いところは、あくまでも日本語の歌詞に曲をつけることにこだわっているところですね。そこが「メロディーお玉」と共通している。

 私も「日本語と音楽」の関係を大学時代に専門で勉強し、卒論も江戸語のアクセントと山田流箏曲のメロディーの関係についてのものでした(マニアックすぎてなんのためにもならない…笑)。

 日本語は高低アクセントですので、旋律をつける際、どうしてもそれに引きずられるのです。これは英語などの強弱アクセントに比べると、作曲上の大きな縛りになります。

 何度かこのブログでも書きましたとおり、日本語はですね、この高低アクセントともに、音節が必ず母音で終わる開音節構造を持っているがために、旋律を限定的にしてしまう性質を持っていました。

 それらを意図的に解体したのが、ユーミンと桑田佳祐なんですね。ユーミンはアクセントを無視し、桑田佳祐は一つの音符に複数の音節を乗せることをやってのけました。ですから、当初は二人ともに「歌詞が聞き取りにくい」と批判されました。

 しかし、その日本語の縛りから音楽が解放されて、そののちの大衆音楽がいかに発展したかは説明するまでもありません。革命的なことでした。

 で、嵯峨山さんはある意味古臭いこと、すなわち旧来の日本語作曲法に則っているわけですね。高低アクセント(イントネーション)を基本守って自動作曲するようにした(音節についても1音1音節になっている?)。

 あとは、コード進行のパターン、私たちが自然に感じるコード進行をたくさんサンプリングして、そこにメロディーを当てはめていく。これって、まあ、人間がやる作曲の作法と同じなわけですよね。ですから、そこそこの名曲は自動でできてしまう。

 ただ、これはAIそのものの問題点でもあるわけですが、あくまでも、AIが扱えるのは「過去の記憶」でしかありません。過去になかったモノは生み出せない。

 しかし、人間には「未来の記憶」があります(!)。そこが、真にクリエイティヴな生命としての人間の優位性です。

 違う言い方をすれば、人間は神とつながれますが、AIにはそれは無理なのです。

 ま、なんてことは置いておいてですね、とにかくこの「ORPHEUS」、面白いことこの上ないし、とっても勉強になるので、皆さんもいろいろいじって遊んでみてはいかがでしょうか。

 音楽の世界で起きていることを、別の世界も追随します。つまり、未来を占う上でもこの「ORPHEUS」は興味深いのです。

ORPHEUS

嵯峨山先生インタビュー

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