『日本の喜劇王―斎藤寅次郎自伝』 (清流出版)
先日、「東京キッド」と「ハモニカ小僧」を紹介した、秋田の矢島出身の映画監督、斎藤寅次郎の自伝です。
この本にも書かれているとおり、実は蒲田でスラップスティックコメディの短編映画を盛んに撮っていたのが、斎藤寅次郎と小津安二郎です。
のちに小津は文芸派となり、押しも押されぬ「世界の巨匠」となっていきます。一方、斎藤寅次郎は生涯「ナンセンスな笑い」にこだわり続け、「日本の喜劇王」となりました。
対照的な二人。小津についてはほとんどの作品を観ましたし、本もたくさん読んできました。寅次郎については、残念ながら多くの作品は鑑賞不可能ですし、研究書もありません。
ですからこの本は非常に貴重です。自伝や自作の解説は読んでいるだけでも楽しい。さすが喜劇王です。文章もしゃれています。
寅次郎は昭和37年に監督業を引退しますが、その後、自分の名を借りた「車寅次郎」は国民的人気者になったことから、本人は本名の「寅二郎」に戻るのでした。
そう、「斉藤寅次郎」の魂は「車寅次郎」に引き継がれるという、ある意味最高の形で現代にもしっかり生き続けているのです。
この本の冒頭、秋田で生まれ育った少年「寅二郎」について、のちの「寅次郎」が軽やかに活写しています。やはり幼児期の体験が、その後の人生を決定づけていますね。実に興味深いところです。
Amazon 日本の喜劇王―斎藤寅次郎自伝
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 『大鹿村騒動記』 阪本順治 監督作品(2025.05.17)
- 『砂の小舟』 丹波哲郎 監督作品(2025.05.08)
- 追悼 大宮エリーさん(2025.04.28)
- 『新幹線大爆破』 樋口真嗣 監督作品(2025.04.23)
- 『アルプススタンドのはしの方』 城定秀夫 監督作品(2025.04.01)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『宗良親王信州大河原の三十年〜東海信越南北朝編年史』 松尾書店(2025.05.19)
- 『皆神山オカルト学序説 -ピラミッド説・皇居移転計画・カゴメ紋解析-』 長尾 晃(2025.05.02)
- 『だっこがしたい足くん』 そうた (Clover出版)(2025.04.29)
- 追悼 大宮エリーさん(2025.04.28)
- 国語便覧(第一学習社)(2025.04.25)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 光明寺さん(小山市)で思う(2025.05.23)
- 榮山寺のカオスとコスモス(2025.05.22)
- 吉野〜南朝の幻影(2025.05.21)
- 『超国宝』展 (奈良国立博物館)(2025.05.20)
- 私的「大鹿村騒動記」(2025.05.18)
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 乙姫さま降臨(2025.05.26)
- 豊橋〜名古屋〜大阪難波 特急の旅(2025.05.25)
- 岡崎市円山の神明宮と古墳群(2025.05.24)
- 光明寺さん(小山市)で思う(2025.05.23)
- 榮山寺のカオスとコスモス(2025.05.22)

コメント