『日本の喜劇王―斎藤寅次郎自伝』 (清流出版)
先日、「東京キッド」と「ハモニカ小僧」を紹介した、秋田の矢島出身の映画監督、斎藤寅次郎の自伝です。
この本にも書かれているとおり、実は蒲田でスラップスティックコメディの短編映画を盛んに撮っていたのが、斎藤寅次郎と小津安二郎です。
のちに小津は文芸派となり、押しも押されぬ「世界の巨匠」となっていきます。一方、斎藤寅次郎は生涯「ナンセンスな笑い」にこだわり続け、「日本の喜劇王」となりました。
対照的な二人。小津についてはほとんどの作品を観ましたし、本もたくさん読んできました。寅次郎については、残念ながら多くの作品は鑑賞不可能ですし、研究書もありません。
ですからこの本は非常に貴重です。自伝や自作の解説は読んでいるだけでも楽しい。さすが喜劇王です。文章もしゃれています。
寅次郎は昭和37年に監督業を引退しますが、その後、自分の名を借りた「車寅次郎」は国民的人気者になったことから、本人は本名の「寅二郎」に戻るのでした。
そう、「斉藤寅次郎」の魂は「車寅次郎」に引き継がれるという、ある意味最高の形で現代にもしっかり生き続けているのです。
この本の冒頭、秋田で生まれ育った少年「寅二郎」について、のちの「寅次郎」が軽やかに活写しています。やはり幼児期の体験が、その後の人生を決定づけていますね。実に興味深いところです。
Amazon 日本の喜劇王―斎藤寅次郎自伝
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