オックスフォード白熱教室「数学が教える”知の限界”」
シリーズ最終回。
昨日までの流れで言いますと、「数学が教える”知の限界”」とは、まさに「コト」の限界のことですね。人間の小さな脳ミソで認識されることが「コト」ですから、それは限界があって当然です。
しかし、コトを超えた高次元世界(宇宙)とつながることはできます。いわゆる言葉にならない世界ですね。本当の意味の「言語道断」。あるいは「得も言われぬ」というやつですね。芸術の本質はそこにありますから、やはり芸術の方が数学よりも、感性の方が知性よりも高次元ということでしょう。
そうそう話がそれますが、最近「エモい」っていう言葉がはやってるじゃないですか。これは「emotion」「emotional」が語源だと思うんですが、偶然にも「えもいわれぬ」の最初の三文字と一致しています。これは実に面白い偶然ですね。「エモい」はまさに「得も言われぬ」ですから。
「得も言われぬ」は言うまでもなく、古文で習う「え…ず」という不可能表現の名残です。「言うことができない」「言葉では言い表せない」ということですから、まんま「言語道断」な「モノ」世界への直接的な共感です。
そう、古い日本語では「もの」はまさにそういう意味でした。「もののあはれ」が一番わかりやすい。言葉にできない、したくない時には、日本語ではたとえば「ものす」という動詞のように、「もの」を使いました。あきらかに「こと(言・事)」と対比される存在として「もの」がある。
だから、なんでも「エモい」と言ってしまう若者は素晴らしいんですよ。逆に西洋近代的思考にとらわれた老人は、なんでも言語化したがる。実はそっちの方が低次元なんです。
なんて、自分も老人ですからね、こうして「コト化」して喜んでいるわけです(苦笑)。ただ言えるのは、あらゆる芸術家は、職人的に「コト」を極めていこうとします。そして「モノ」世界に至る。ここが面白いところです。私がいつも「コトを窮めてモノに至る」と言っているのは、そういうコトです。世の中、人生はそういうモノなのです。
ペレリマンがポアンカレ予想を解いたあと世捨て人になった(きのこ狩りをしている?)のも、そういうことでしょうし、ガロワの死ももしかするとそういうことだったのがもしれません。
数学が宗教的であり、どこか「死」を予感させるものであるのもうなずけますね。
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