落合陽一×宮台真司 『次の時代をどう生きる』
この対談は面白かった。本来の「アカデミック」な存在であるお二人、こうして会うのは初めてだというのはちょっと意外でした。
お二人の意見には多くの部分で同意。身体性を失いつつあることを、より抽象的なところで虚しく埋め合わせていく現代。はたして人類は、いや人類の幸福はどちらに向かって動いていくのでしょうか。
宮台さんのおっしゃる、偶発性、未規定性というのは、ワタクシの「モノ・コト論」で言うところの「モノ(他者・不随意・想定外」と完全に一致します。私が「コトよりモノの時代」というのは、まさにそういう意味です。
そして、自己(コト)が自己で完結するのではなく、他者(モノ)にとって、いかに「他者性・偶発性・エンカウンター」になりうるかというのが、それこそ「ニーズを作り出す」ということなのでしょう。
そして、それはお釈迦様の語る「縁」と同義になってくる。縁という関係性こそが、私たちの存在そのものなのです。つまり私たちはそれぞれ「自己(コト」であり、「他者(モノ)」であるという、まさに中動態的な存在であることを知るべきです。
そういう意味で、テクノロジー(機械だけでなく制度なども含む)が「優劣」の「劣」を補助する方向で発達する傾向があるのは、ちょっと問題があると思います。なぜなら、その前提である「優劣」という概念自体が、私たちの社会的な価値観から生まれたものだからです。
それはたとえば自己の中にも内在します。自己の中の他者(モノ)であるとも言える身体。私たちにとって、最も身近な、自分の思い通りにならない不如意、不随意なモノは、自らの身体です。それを社会的感情に基づいて「劣」とし、脳みその中の言語的情報(コト)を優としてしまったのが、この近代そのものでありましょう。
その価値観に従ってモノを封じ込め、コトを祭り上げた結果が、この現代です。ですから、これからのテックは、やはり「目が合う」「目を合わせる」「見る、見られる」の関係性を生み出す方向に進化すべきでしょう。
一方では、最近のファーウェイの話ではないですが、私たちは無意識的に、たとえばスマホに「見られている」状態ですよね。昨日も「あなたがスマホでエロサイトを見ているところを録画しました、ばらされたくなければビットコインでいくら払え」的な迷惑メールが来ましたが、あながちそれもウソではない状況になっています。
つまり、見られないように、目が合わないようにと、私たちが求めてきた極プライベートな時空間が、実は全世界に見られているかもしれないという、笑ってしまうようなパラドックスを生んでいるわけで、そういう意味では、テクノロジーというのも自然界と同じように、ある種のバランスを勝手にとっていくものなのかなとも思います。
人間ごときにはどうしようもない、絶対的な他者に対する想像力を鍛えていかなければならない時代が、もう目の前まで来ているのでしょう。それはまさにモノの復権、宗教以前の超古代的なアニミズムのような世界への回帰なのかもしれません。実に楽しみです。
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