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2019.01.15

森達也監督作品 『A』

 来映画作りに関わりたいと考えている次女と鑑賞。ドキュメンタリーにこそ監督の思想が表現されるということを知ってほしかった。
 バッシングオンリーだったオウム報道の中、あえて中立という立場を取っているかのように見せつつ、結果としてこの映画は相対的にオウムを擁護する形になりました。
 オウムの人たちは純粋な青年たちであり、異常なのは世間の方であるという構図が浮かび上がるようになる。たとえ森さんがそんなことを意図していない、あくまで中立であると言っても、たとえば私のようなオウム世代の人間にとっては、自然にオウムの方にシンパシーがわき、世間に対する違和感が醸成されてしまうように、ある意味たくみに作られています。
 私は完全にオウム世代。オカルトで育ち、バブルに違和感を覚え、仏教に目覚め、正直ギリギリのところでオウムに入信しなかった人間です。いや感覚的にはギリギリとはいえ、現実的な可能性は限りなくゼロでした。なぜなら、私には出家する勇気も根性も全く欠けていたからです。
 そういう意味では今でもオウム真理教という存在や、彼らが起こした様々な事件の評価は、自分の中で定まっていません。
 そのあたりの心情はこちらにも書きました。
 彼らを単純に排除しようとするのは、まさに「殺人」と同じ行為です。出て行け、目の前から消えろ、というのは殺人と同じ発想と言えます。
 昨年、麻原を含む複数の死刑囚の死刑が執行されました。法という国家権力を借りて、ある意味私たちの「排除=殺人」が達成されました。
 さて、それで私(たち)の心の中のオウムは本当に消えたのでしょうか。

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