森達也監督作品 『A』
将来映画作りに関わりたいと考えている次女と鑑賞。ドキュメンタリーにこそ監督の思想が表現されるということを知ってほしかった。
バッシングオンリーだったオウム報道の中、あえて中立という立場を取っているかのように見せつつ、結果としてこの映画は相対的にオウムを擁護する形になりました。
オウムの人たちは純粋な青年たちであり、異常なのは世間の方であるという構図が浮かび上がるようになる。たとえ森さんがそんなことを意図していない、あくまで中立であると言っても、たとえば私のようなオウム世代の人間にとっては、自然にオウムの方にシンパシーがわき、世間に対する違和感が醸成されてしまうように、ある意味たくみに作られています。
私は完全にオウム世代。オカルトで育ち、バブルに違和感を覚え、仏教に目覚め、正直ギリギリのところでオウムに入信しなかった人間です。いや感覚的にはギリギリとはいえ、現実的な可能性は限りなくゼロでした。なぜなら、私には出家する勇気も根性も全く欠けていたからです。
そういう意味では今でもオウム真理教という存在や、彼らが起こした様々な事件の評価は、自分の中で定まっていません。
そのあたりの心情はこちらにも書きました。
彼らを単純に排除しようとするのは、まさに「殺人」と同じ行為です。出て行け、目の前から消えろ、というのは殺人と同じ発想と言えます。
昨年、麻原を含む複数の死刑囚の死刑が執行されました。法という国家権力を借りて、ある意味私たちの「排除=殺人」が達成されました。
さて、それで私(たち)の心の中のオウムは本当に消えたのでしょうか。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 『首』 北野武 脚本・監督・編集作品(2023.12.05)
- 『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』 竹林亮 監督作品(2023.12.02)
- 『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて』 魔夜峰央原作・武内英樹監督作品(2023.11.29)
- NHK「音楽の広場」タモリとスポーツテーマ曲(2023.11.25)
- ナイツ 『野球寿限無』(2023.11.15)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 福岡のパワーの源は…(2023.12.01)
- 資源大国日本?(2023.11.27)
- 誓の御柱(四日市市諏訪公園)(2023.10.13)
- 忍者学!(2023.10.12)
- ハマスとイスラエルが対立(2023.10.11)
「歴史・宗教」カテゴリの記事
- グレン・グールドの『バッハ フーガの技法』(2023.12.06)
- 『首』 北野武 脚本・監督・編集作品(2023.12.05)
- バッハ『フーガの技法』を見る(2023.12.04)
- 香椎宮にて(2023.12.03)
- 福岡のパワーの源は…(2023.12.01)
コメント