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2019.01.16

森達也監督作品 『A2(完全版)』

 日の「A」に娘もかなり衝撃を受けたようなので、続編の「A2」、それも3年前に公開された「完全版」を鑑賞しました。
 作品としては、正直こちらの方が面白かったと思います。オウムの内部というよりも、今回は外部の方に焦点が当てられた、いや、内部と外部との関係の「妙」が上手に表現されていて、それが私たちのよく知る対立と対話の物語に、ある種の興奮や赦しや癒やし、さらには滑稽さまでもが見え隠れしてきます。
 対立という濃厚な接触をしているうちに、いつの間にか友人のようになっていくというのは、よくある物語のパターン。あるいは、たとえば警察という正義が簡単に悪になってしまうという物語。
 そのあたりのあぶり出しのテクニックは見事だと思います。すわなち編集術ですね。御本人も語っていたと思いますが、森さんはかなり意識的に私たちの価値観を揺るがす編集をしています。
 私たちは、映画という時間の流れの中に囚われているうちに、しっかりマインドコントロールされている。それはまさにオウムのテーマそのものでもあるという入れ子構造。すなわち正義もまた洗脳であると。
 森さんの作品には、映画に限らず書物にしても、そういうデプログラムという逆説的な洗脳のシステムがインストールされています。
 ドキュメンタリーだからこそその効果は大きい。現実のように見せかけた「作品」なのですから、それじたいも「FAKE」です。言い方によっては悪質だとも言えます。
 そう、語弊があるのを承知で言うなら、また私自身の得意の語り口のことも棚に上げず言うなら、「正義」のふりをした「悪意」であるとも言えるのです。それもまたオウムの存在そのものに重なります。
 そういう多重構造、多義的な構造こそが、この映画、森作品の魅力であると言えましょう。私は嫌いではありません。
 それにしても、一人ひとりは皆さん、いい人ですね。オウム(アレフ)の皆さんも、警察の皆さんも、マスコミの皆さんも、右翼の皆さんも、住民の皆さんも。それが集団になるとなぜ…そこがこれらかの人類の課題なのでしょうね。

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