『芸の心 〔能狂言 終わりなき道〕』 野村四郎・山本東次郎・笠井賢一 (藤原書店)
昨日も「ものまね」の話が出ましたが、こちらも「ものまね」、それも歴史的「ものまね」。
こちらに書きましたとおり、私の「ものまね」の語源論は「モノを招く(招霊)」説です。これには絶対的な自信を持っています。
この話は、ものまね芸人のホリさんにもしましたし、またこの本の著者の一人である人間国宝能楽師、野村四郎さんにもお話したことがあります。お二人とも「なるほど」とおっしゃってくださいました。
そしてこの本を読んで、さらに確信しました。どこまでも自我(コト)を排除して他者(モノ)を招く。まさに禅に通じる「道」。終わりなき道です。
今日ちょうど次女が野村四郎先生にお稽古をつけていただく日でした。私がこの本を通じて心から感動している言葉を、直接一対一で教えてもらっているわけですから、こんな贅沢な有り難いことはありません。ちょっとうらやましくさえ思います。
実際、帰ってくるたびに娘はため息をつきます。「難しいけど、面白い」と。
この能と狂言の頂点にいるお二人が、口を揃えて「終わりがない」という。命には限りがあるが、能狂言には終わりがない。だからこそ励むことができる。世阿弥も同じことを言い遺しています。
能はサイエンスだと落合陽一くんも言ってますね。つまりサイエンスは「モノ」世界を「コト」世界に解釈し変換する役割を果たしている。芸は全く違う方法で「モノ」を「コト」にする。あるいは「コト」で「モノ」を表現する。
よく言われるように、サイエンスとアートが、ようやくぐるっと反対から弧を描いて出会おうとしているのだと思います。
それにしても、この「芸道」の厳しさはまさに修行ですね。日々日常から修行。楽屋も舞台の入り口。普段の所作が舞台に表れてしまう厳しさ。そして、それが今崩れつつあるという憂い。
素晴らしい教育論としても読めました。昨日の宮台先生の本とも、実はつながるところがあります。
巻末の「事典」も実に有用。私ももっと能狂言の世界を勉強いたします。多くの日本人に今こそ読んでいただきたい本です。
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