『大宏池会の逆襲』 大下英治 (角川新書)
安倍一強という、自民党として、いや日本として今までになかった状況が続いています。それが良いことなのか、悪いことなのかは、のちに歴史が教えてくれることでしょう。
そうした現状は「宏池会」の弱体化であるとも言えます。保守本流、穏健ハト派である「宏池会」が、その内部分裂などによって自らの力を弱めてしまったのは事実です。
そして、だからこそ「大宏池会の逆襲」なのです。歴史は繰り返す。偏りすぎたものは揺り戻す。これは政治の力学だけでなく、宇宙の法則でもあります。
そう考えると、今の安倍一強というのは、未来のスウィングのためのバックスウィングということになります。
今年の夏、バックスウィングの当事者の別荘にお招きいただき、そして2021年以降の話をさせていただきました。
実はもうそういう方向で動いているのです。政治の現場というのはそういうものです。未来的に今動いている。
岸田さんが昨年「未来戦略研究会」を設立し、この夏に2050年のヴィジョンを発表したのは象徴的でした。
そこで私が思い出さずにいられないのは仲小路彰のことです。知られざる黒幕ですから、もちろんこの本にも出てきませんが、宏池会の誕生と成長に、間接的であれ仲小路が影響を与えたのは間違いありません。
仲小路彰は、熊本の五高で、池田勇人、佐藤栄作と同級生でした。そして、彼らよりはるかに成績が良かった。言うまでもなく、池田と佐藤は宏池会と深い関係があります。
また、山中湖での隠棲(ある意味院政)にあたっては、富士急行創始者の堀内良平やその子孫たちの援助がありました。堀内家も宏池会の歴史のど真ん中に存在しています。
戦後、仲小路は吉田茂に多くの提言をしています。仲小路の言う「グローバリズム」や「地球平和」、さらに「未来学」、そしてそれらの中における対米政策などが、吉田に大きな影響を与えたことも間違いありません。そして、それが吉田学校を通じて宏池会の精神につながっている。
この大下さんの著書が表の宏池会史だとすると、私がここに書いていることは裏の宏池会史ということになるかもしれませんね。
そろそろバックスウィングも折り返し点に至りつつあります。2021年以降、はたしてどんなスウィングが様々な逆境を打ち返すことになるのか。私は非常に楽しみにしているのであります。
その時代はきっと(また)富士山が鍵を握ることになるでしょう。仲小路が富士山麓に40年間蟄居していたのには、そういう未来的な意味があったのです。
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