『聖なる約束4 ヤマト人への福音 教育勅語という祈り』 赤塚高仁 (星雲社)
今日はいろいろなお客様が入れ代わり立ち代わりいらっしゃり、合計6時間ほどお話をしました。
「対話に貴賎なし」がモットーのワタクシといたしましては、大変楽しい一日でした。
その中のお一人、政治家の方とは「教育勅語」の話になりました。そう、新文科大臣の発言がありましたので、そこからのお話でありました。
教育勅語が素晴らしいという人と、教育勅語なんかとんでもないという人の溝は埋まりません。なぜなら、論点、評価のステージが全然違うからです。
私はそのステージを行き来できると自負しておりますので、称賛も批判も両方できるつもりです。
ただ一つ、直視していなければ教育勅語自身が持つ矛盾もしっかり直視しなければならないと思います。すなわち、教育勅語の眼目である「忠孝」は儒教の教えであり、決して日本古来のもの(国体の精華)ではないということです。
いや、我が国の国柄は宏遠であり、彼の国の教えをも内包しているのである…なんて言い訳もありえます(いかにも私が言いそう…苦笑)。あるいは、忠孝のルーツは日本であるという言い方もありかな。
しかし、教育勅語の時代性から考えると、実は単純な構造であって、江戸時代以来の儒教的家族観、友人観の最上位に、天皇への忠義を置いたものにほかなりません。
そこを基準に論じると、たしかにいいことを言っている部分もあるが、それは別に教育勅語でなくてもいいだろうという、非常に単純な結論に至るわけですね。儒教の教えのエッセンスを紹介したものはほかにもいくらでもあるし、天皇家の素晴らしさを、あるいはあの時代の天皇制の危険を語るものもいくらでもある。
教育勅語に関しては別にケンカすることはない。どっちも正しいし、どっちも間違っている。原理主義的二元論の罠にはまっているだけです。議論の仕方がいかんのです。
では、私たち現代人は、教育勅語全体とどう付き合えばいいのか。それ自身が内包する矛盾をどう乗り越えればいいのか。
というわけで、今日紹介する本は、知り合いである著者御本人からお送りいただいたものです。これは、今述べた二元論的な判断基準によるものではなく、儒教の上に「やまとこころ」を置き、天皇をキリスト(救世主)に見立てるという、全く別次元のお話です。
これはこれで実に面白いストーリーであり、私は楽しく読ませていただきました。もちろん小馬鹿にしたり、ましてや怒り出したりはしません。21世紀において、そのような読みが可能ならば、それはそれでいいと思います。
世の中には「教育勅語トンデモ本」というジャンルがあります。この本なんか、その中でもかなり先鋭な存在でしょう。たしかに常識的には「トンデモ」の称号を与えられてしかるべきでしょう。
しかし、出口王仁三郎や仲小路彰に親しんでいる私としては、こういうトンデモ世界に、世の中の本質が見え隠れしているように思えてならないのです。
少なくとも不毛なケンカのタネにするよりは、こうして新たな意味を付与する方が、当時の皆さんにも失礼がない…と思います。
それにしても、著者赤塚さんのピュアな魂と行動力には、本当に頭が下がります。自らのお役目をよく知っていらっしゃる方です。
Amazon 聖なる約束4 ヤマト人への福音 教育勅語という祈り。
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