『なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか』 立川談慶 (日本実業出版社)
昨日の話の続きなりましょうか。「学校」という異様空間の中での優等生が本当に優等なのか。それとも与太郎にこそ生きる力があるのか。
実はこの問いに対する正解を、多くの先生たちは経験的に知っています。
もちろん、優等生こそ優等…なのではなく、与太郎こそ可愛げがあり、生きる力を持っていて、なんだかんだ社会に出るとうまくやっていっている。
逆の心配も常に消えません。すなわち、優等生がダメになるという経験則です。
ですから、私も含めて、心ある(?)先生たちは、優等生を見つけると、それを崩しにかかります。それこそが仕事だとも言えます。
今日もたまたま卒業生姉弟とその親御さんが遊びに来たのですが、その卒業生は二人とも、特に弟くんは「学校」的には手がかかりましたが、まあ、大人になったらそれなりにちゃんとやっていけるでしょうというタイプでした。
そういう目利きをした先生たちは口を揃えて「大丈夫ですよ」と言いましたが、母親は心配でしかたなかったし、今も心配だと、今日は笑っていました。
立川談慶さん、実は先日、私学の研修で講演されたのです。その話がとても面白かったので、御本人おススメのこの本を読んでみたというわけです。
うん、たしかに!ということがたくさん書いてありました。談慶さん、山梨の私立の進学校を出て慶応大学に入り、ワコールに就職したという、まあそれだけ見れば、まあ優等生の部類に入るでしょう。
しかし、そこから会社をやめて、立川談志に入門する。すっかり与太郎になってしまいました(笑)。ある意味、ボケとツッコミの両方を経験、理解している人ならではの、とってもためになる本でした。
そうそう、ボケとツッコミって、素人のワタクシからすると、ボケがバカでツッコミが賢いのかと思っていたら、逆なんですね。うん、たしかに、ボケは社会の常識から自由で、ツッコミはそこに縛られている。だから、ツッコミの方がバカだと。キンコン西野さんもそう言っているそうです。
そうした視点の転換を促すのが落語であり、またこの本であると思います。
談慶さんの言葉を使えば、「敏」と「鈍」のアウフヘーベンでしょうか。二項対立、二元論ではなく、それらをアウフヘーベンするのが落語であり、日本人の知恵であったと。
ディズニーランドに行くか、家で静かに写経するかで迷ったら、「ディズニーランドで写経する!」だそうです(笑)。なるほど!好きだなあ、その発想。
時代が急速に変化していく現代、こうして古典の洗練された「型」の世界に、ある意味逆説的に真理を見出すことは、とても大切なことでしょう。それ自体が、現代と過去、新と旧といった二項対立を超えることだと思います。
それにしても、たしかに談慶さんの話し方をうまかったなあ。あのリズム、間、微妙なずらしや、フリ、オチなど、人前でしゃべることを仕事としている者として、大変参考になりました。
Amazon なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか
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