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2018.06.21

『ツィゴイネルワイゼン』 鈴木清順監督・原田芳雄主演作品

Th_51gjcfrcybl_sy445_ 〜む、すごい…。今さらながらではあるが、本当にすごい。久しぶりに理性が崩壊しました。
 この映画を観るのは実は二十数年ぶり。まさか自分の娘と一緒に見入ってしまう日が来るとは思いませんでした。
 将来映画に関わる仕事をしたいと言い出した下の娘。洋画やアメリカのドラマも好きですが、最近は邦画を静かに観たいと言い出した。いいことです。まあ、彼女は能、箏曲、剣道と、伝統的な稽古の日々を送っていますから、当然の成り行きでありましょう。
 ちなみに、決してそれらを強制したことはありません。紹介もあまりしませんでした。勝手にそっちに進んでいきました。たぶん。
 で、いちおうそこそこ昭和の邦画を観てきた父親としては、タイミングを見て、徐々に名作を引っ張り出してきて見せようと思っているわけです。
 ちょっと早いかなと思いつつ、今回引っ張り出してきたのが、この「ツィゴイネルワイゼン」。
 なぜなら、娘は「恐怖劇場アンバランス」が好きでして(ってその時点でマニアックだし親の影響がある)、アンバランスと言えば、鈴木清順、藤田敏八が監督をし、田中陽造が脚本書いてるじゃないですか。そうすると自然と「ツィゴイネルワイゼン」を観なきゃならなくなりますよね。
 で、観たわけですが、親子で目が点になっちゃいました。私も初めて観たかのような衝撃に打たれました。久しぶりに、盤石だった日常が崩壊しました。それが実に快感。
 意味や因果関係を拒否し、ただただイメージとしての「美」と「エロス」を描ききった作品。たぶん現代の映画やドラマしか知らない娘にとっては、非常に未来的に感じられたことでしょう。いや、能をやっているので、中世的とも思ったようです。つまり時空を超えて美しいし、カッコいい。
 大人になったワタクシの新発見としましては、「美」と「エロス」の双方の底辺に、「嫉妬」があるということでした。なるほど、そうか。
 そして、夢こそが本体であり、現実こそが虛構だということ。あるいは死が本体で生が虛構であるということ。なるほど、これは普遍的な魅力を備えた完璧な映画だ。
 それにしてもなあ、主演の四人の魅力的なこと、この上ない。原田芳雄は言うまでもなく、ある意味シロウトの藤田敏八がいい味を出しすぎている。原田に対して藤田を選んだことがまず成功だし、すごい。両方達者な役者だったら…。
 原田と藤田、そして清順監督は亡くなってしまいましたが、大谷直子と大楠道代は健在でいらっしゃる。やっぱり女は強いのだなあと、この夢と現実をつなぐ映画を観たあと、ふと思いました。最初に死んだのは藤田か。
 原田芳雄が亡くなった時、そして昨年鈴木清順が亡くなった時には、追悼記事を書きましたっけ。

追悼!原田芳雄 『原子力戦争 Lost Love』 (黒木和雄監督作品)
追悼 鈴木清順監督

 あらためて昭和の男三人のご冥福をお祈りします。あなたたちは永遠です。


 
Amazon ツィゴイネルワイゼン

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