生誕109年・没後70年…太宰治 『右大臣実朝』
今日は桜桃忌。今年は太宰治、没後70年、生誕109年にあたる年です。
それにちなみ、今日は改めて一つ作品を読んでみようと思いました。時間もないので短編を、と思いつつ、結果としてはちょっと長めな作品を選んでしまいました。
というのは、ここのところの地震のことを考えていた時、そういえば「右大臣実朝」には地震の話がたくさん出てきたなと、ふと思い出したからであります。
検索してみたら、28箇所「地震」という文字がありました。そう、実朝の生きた12世紀から13世紀にかけては、関東や関西で大きな地震が相次ぎました。
たしかな記録としては残っていませんが、地質調査の結果、1200年ごろには、今も発生が予測されている南海トラフ巨大地震も発生したと言われています。ちなみに鎌倉の大仏の大仏殿が津波で流されたのは、室町時代の明応の大地震です。
この「右大臣実朝」は、吾妻鏡を資料として引用し、その無味乾燥な記述から、実朝の人間性を生き生きと描き出すという、太宰得意の小説制作技法をとっています。そう、太宰は原資料をたくみに翻案、換骨奪胎するテクニック、才能に異常なほど恵まれた作家です。
正直、ちょっとずるいと思ってしまうくらい、うまい。この「右大臣実朝」もまた実にずるい作品と言いいたい。
執筆時期がまた微妙です。昭和17年から18年。まさに明治維新から現在までの150年の、ちょうど折り返し地点。戦局も暗転していく時期ですね。
そういう時局だからこそ、歴史物をもって人間を描くという方向に向かったとも言えます。最終的には甲府で作品を仕上げたというのも、私にとってはこの作品を身近にしている原因です。太宰には、山梨の風土が色濃く影響を与えています。
皆さんも、ぜひこの機会にこの名作を読んでみてください。いつものことですが、内容よりも、その文章のリズム感の良さに、私は惹かれてしまいます。なんとも音楽的です。吾妻鑑と対比によって、それがまた際立っているのです。
青空文庫 右大臣実朝
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