キース・ジャレット・トリオ 『アフター・ザ・フォール』
今日は我が校のジャズバンド部の感謝祭が行われました。6年間お世話になったウチの娘もいよいよ卒業ということで、最後の演奏をしました。
あっという間の6年間でしたが、まさに人生を変える経験をさせていただき、私としても感謝感謝であります。
卒業後は東京女子大学にて国際関係などを学ぶ予定ですが、あくまでも未来の夢はプロのベーシストになることです。大学時代には、今までもお世話になっていた先生のレッスンを受けるとともに、大学生ならではの自由な音楽活動をして、いろいろ学んでもらいたいと思っています。
まさか娘がベースを、そしてジャズをやるとは思いもしませんでした。すすめたことは一度もありませんでしたからね。出会いとは不思議なものです。
おかげさまで、私も従来好きだったジャズを、また違った視点、聴点で受容することができました。
最近毎日聴いている、このキース・ジャレットのアルバムも、きっと6年前に聴いていたら、今ほど豊かな感動を得られなかったかもしれません。
5年前、彼らトリオの日本最終ライヴをジャズ部の生徒たちと聴きに行きました。その時のことはこちらに書いてあります。私にとってもとんでもない日でした。音楽が結ぶ不思議なご縁。
残念ながらこの歴史的なトリオの演奏はもう生で聴くことはできなくなってしまいましたが、20年前の伝説の録音が先月発売になりました。それがこのアルバムです。
慢性疲労症候群から復活して初めてのトリオ・ライヴ。あの神がかったピアノ・ソロ録音の次に録音されたトリオ・ライヴ。
ソロ・アルバムでは、自らが神の化身となって自らを癒し、そして、今度は仲間が彼を癒した。その癒しは、ある種の興奮と瞑想という形で、私たち前に立ち現れています。
先日、天才物理学者と宇宙論で盛り上がりましたが、その中心には常に音楽が存在していました。そう、コトとコトの間の関係性に立ち現れるモノ、それこそが「空」であると。
一つ一つの音は、ある意味点でしかないけれども、それが二つ、三つ、四つと重なるごとに、私たちに感情や感動を呼び起こす「何か」が立ち現れる。
実は宇宙の構造もそうなのではないかと。天体という物質どうしの間に関係性があるように、もしかすると、情報どうしも互いに影響を与えあっているかもしれない。もちろん波動どうしも。
そして、その、私たちが感知できるコト、たとえば音楽で言えば、一つ一つの音が音楽自身なのではなく、その音たちの関係性こそが、音楽本体なのではないかと。
つまり、宇宙も、何もないとされている空間、時間にこそ、実は本体があるのではないか…。
クラシック音楽、すなわち極度にシステム化され、単純化された(とあえて言います)音楽は、宇宙の根源的な法則や調和を象徴します。
それに対して、多くのテンション(コードもリズムも)を含むジャズは、人間と神との関係を表現しているように感じます。
もう一方の極致たる、たとえば謡曲などを聴いていますと、それはシステム化されていない、数値化されない関係性の連続です。しかし、ノイズではない。それはすなわち、人間をも含む(地球上の)自然の有り様を表現しているようにも感じます。
このように実に多様な世界の象徴となりうる音楽というのは、まことに素晴らしい神からの贈り物です。
ここに歌(言葉)が加わってきますと、さらに複雑な関係性の中の、実に多様な情感が生み出されます。不思議ですし、感動的ですね。
このアルバムでの三人の生み出す世界は、それこそ人間と神の美しき関係性を象徴していますし、一方では、人間の身勝手さ、粗雑さをも表現しているように思えます。
ジャズの面白いところは、西洋近代の音楽システムや工業化された楽器の上に立ちながら、神に反抗するかのように、複雑さ、一回性に挑戦しているところですね。
神様の大きな手のひらの上で、思いっきり人間が遊んでいるような、そんな感動があります。何もないはずのところに、複数の点が生まれ、それらの関係性の中に縁起するモノ。無であり有であるのが、すなわち「空」なのです。
よく No Music No Life と申しますが、実は宇宙の生命は音楽そのものであるとも言えるので、当然と言えば当然なのですね。
音楽よ、生命よ、本当にありがとう。
Amazon アフター・ザ・フォール
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