二・二六事件当日(小島威彦)
今日は二・二六事件から82年目の日。そして、仲小路彰の117回目の誕生日となります。そう、仲小路彰は1901年の2月26日生まれなんです。
ですから、仲小路彰の35歳の誕生日に二・二六事件は勃発したことになります。
当時の仲小路の家は広尾にありましたから、事件現場の比較的近くですね。仲小路自身がその日のことについて書いたものは、いまだ見つかっていませんが、仲小路の親友であった小島威彦が「百年目にあけた玉手箱」にその日のことを書いています。
今日はその文章を紹介します。ある意味当時の雰囲気がよく分かる内容です。事件が思わぬ方向に収束していくことを象徴するように、なんとなく冷めた空気が東京を支配していたように見えますね。
…二月二十六日早朝、大雪とともに大事変が勃発した。恰も忠臣蔵の討入りの黎明を迎えたように、東京は深々と降りしきる雪に蔽われた。僕の舎兄清彦はその朝八時半に日比谷公園と向かい合っている勧業銀行本店に出勤したところ、ただならぬ陸軍反乱軍の決起を目撃して、泡を喰って、左近司と軍令部の舎兄秀雄と同盟通信社の義弟波多尚は僕へ電話してきた。「陸軍革命軍は総理官邸において岡田首相、前首相斎藤実、高橋是清蔵相、渡辺錠太郎陸軍教育総監を殺害し、目下その殺害目的は進行拡大中だ。大変な事態だ。日比谷と赤坂方面は蹶起した近衛連隊が陣取って砲門を敷いているようだ。兵隊はすべて銃剣だし、物々しい有様だよ。」僕は身支度をして田園調布から渋谷に出て赤坂へ向かった。もう昼だった。別に銃声が聞えるわけではない。想像したほど騒々しくはない。大きなアドバルンが二本空中に揚がっている。「直ちに原隊へ帰れ!!」と大書した幟が雪空にゆらゆらと風邪に靡いている。拡声器からは引切なしに「直ちに原隊へ復帰せよ。陸海軍はすでに鎮圧の体制を整えた。まだ遅くはない。すぐに原隊に復帰せよ。」僕は二時間余り動静を見ていたが、これ以上の革命的進展はありえないと思い、帰宅した。次から次に号外の鈴の音が巷に満ちている。しかし危機の感情が湧き立っている様相はない。さらに数名の重臣が殺害された。しかし大衆の感情は不景気や沈滞や退廃で燻った暗幕に風穴があいたように受け取っているのであろうか。しばらく沸騰した鉄瓶の蓋を明けて、水でも差せば収まるのかしれない、そんな漠然とした気分が街を蔽っている。
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