金嬉老事件から50年…寺山修司版「HAIR」
期せずして昨日の記事の続きになりますね。
今日は金嬉老事件から50年目の日です。私、当時3歳だったんですけれど、なんとなく覚えてるんですね。
劇場型犯罪のはしり。きっと、テレビで観たんでしょう。
単なる殺人事件が、犯人の「演劇」によって、いつのまにか差別や人権の問題にすり替えられた、なんとも時代を象徴する事件でした。未来を予言するとも言える。
そういう意味では現代においても、そうした傾向は続いています。被害者よりも加害者の人権が守られ、それどころか加害者がヒーローになってしまう。
さてさて、昨日の続きという意味では、この画像を観ていただきたい。これは、仲小路彰邸にて見つかった、ミュージカル「ヘアー」の初期稿の一部です。
この字を見て、誰の字かピンとくる人はかなりのマニア。ちなみにJ・A・シーザーさんはもちろん分かりましたよ。
そう、寺山修司です。実は日本初のロックミュージカルとなった日本語版「HAIR」は、当初寺山修司が脚本を書いたのです。
しかし、それはボツとなり、結局、川添象郎さんの直訳版になった。そのへんの事情については、寺山自身が「ヘアー」白書に書いています。そこに見えない力に妨害されたというようなことが書いてあるんですが、寺山の脚本をボツにしたのは、仲小路彰だと私は考えています。
ま、そのへんのことについては、いずれ詳しく書きましょう。今日は、とりあえず、その一部をご覧いただきたいと思います。そう、金嬉老事件が何度か出てくるんですよ。
金嬉老事件は1968年2月20日に起きました。HAIRが上演されたのは1969年12月。寺山版の脚本はおそらく1968年中に出来上がっていたと思われます。
人種差別、人権問題に劇場型と来れば、これは寺山が注目して当然です。本家HAIRもアメリカにおけるそういう問題を扱った作品ですから、日本語版に翻案するにあたって、寺山らしい仕掛けを施すのも理解できますね。
ここに出てくる「寸又峡」とは、金嬉老が立てこもったふじみや旅館のある場所ですね。永ちゃんは矢沢永吉ではなくて、佐藤栄作総理。
次の部分には、金嬉老自身の名前が出てきます。ちなみに片桐操は1965年に起きた少年ライフル魔事件の主役です。
たしかに、この過激さでは上演は難しかったでしょう。特に仲小路彰はこういうの大嫌いですからね。寺山が影の大物の力を暗示していますとおり、影の大物が川添浩史を通じてダメ出ししたというのが本当のところでしょう。
さて、この寺山版「HAIR」は上演されるのでしょうか。今だからこそしたいですね。やりますよ。
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