「もののけ姫」と同和問題 (古谷経衡)
昨日の西部邁さん自死の衝撃が残っています。
やはり残念です。誰かがツイートしていました。右翼は自死するが左翼は自死しない。殺し合いはするけれど。
まあそんなに単純な話ではないけれども、人間の命をどう捉えるかというのが、左右を分ける一つの視点であったこともたしかです。
西部さんが何かの本で批判していた歴史学者網野善彦さんも、若かりし頃は山梨県の山村工作隊の一員でした。
右、左で言いますと、どちらかというと左と言われる歴史学者網野善彦さん。実は今日は網野さんの誕生日です。生誕90年にあたります。
私は網野さんについて、このブロクで何度か取り上げてきました。若い頃、網野史観に大変な影響を受けましたからね。また網野さんの甥っ子である中沢新一さんからも多くを学んできました(『僕の叔父さん 網野善彦』参照)。
実際、山梨県の郡内地方という特殊地域(?)に住み、富士山をめぐる信仰と生活に触れると、網野さんが実際に体験したであろう「普通の歴史」への違和感を感じざるをえません。
地元の人は、おそらくあまりに日常なので気にならないかもしれませんね。私は外様、マレビトですから、嫌というほど、いや好きになってしまうほど感じています。
西部さんは、たしか網野さんが「敗戦後、日本という国名を考え直す必要があった」と言ったことに対して怒っていたと記憶しています。網野さんのその言葉は、そのままの意味ではなく、「日本」という国名の成立事情を考慮せず、無批判にそれを受け入れている日本人に対する皮肉としてそう言ったのだと思うのですが。まあ、保守陣営に対する挑戦的な揶揄なんでしょうね。
私はそんな網野さんの姿勢も好きでした。学会ではずいぶんいろいろと批判されましたが、逆に庶民のレベル、すなわち芸術や芸能、サブカルチャーなどに多大な影響を与えたことは結果として良かった。なにしろ、研究対象が庶民であり、被差別民であり、芸能者であったわけですからね。
さて、そんな網野史観の影響を受けた作品として最も有名なのは、宮崎駿さんの「もののけ姫」ですね。私も以前、こちらにちょこっと書きました。
最近メディアで大活躍の若手批評家、古谷経衡さんも、網野史観ともののけ姫の関係について以前語っていました。今日はその動画を紹介しましょう。
西部さんの死。古谷さんの活躍。保守系批評も大きな転換点を迎えているように感じます。
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