吉井和哉☓志村正彦 『ザ・ビートルズを語る』
昨日の記事にもこの二人の名前が登場していました。
志村正彦くんが急逝する2ヶ月ほど前に、実はこの二人の対談が実現していました。雑誌「WHAT'S IN」のビートルズ特集コーナー内での対談です。
この前の東京ドームのあと、この対談のことをふと思い出して、ヤフオクで落札しました。あの当時は立ち読みで済ませてしまっていたので。
あらためて8年ぶりに読んでみて、なんとも言えない気持ちになりました。
ビートルズに対する二人の評価はなるほど当たり前と言えば当たり前の内容でしたが、中盤での吉井さんのこの部分がなんとも胸に突き刺さったのです。
最近よく考えるんですけど、ロックとか、もうできないんですよ、オレ。
ー何をおっしゃっているのですか?
いやいや、やっぱロックって仕事にならないんですよ。僕が今やってるのはロックまがいのものであって、本当の意味の、真のロックをやっちゃうと、死んじゃうと思うんです。それを教えてくれたのが、ストーンズとビートルズだと僕は思っていて、ロックに取り憑かれて、死と直面しながらも続けていかざるを得ない人たちと、ロックに取り憑かれてあっという間に終わって、その後に苦しめられる人たち。そのふたつの対称ですね。僕なんか15年ぐらいで中途半端に壊してしまったから、もうロックではないんです。
この対談の数ヶ月後、本当に死んでしまった志村くんと、長い年月をかけて復活し、またロックをやり始めた吉井さん…。
今思えば、たしかにフジファブリックの「CHRONICLE」は志村くんの真のロックでした。ある種の違和感を叩きつけられたファンは正直動揺しました。耳当たりのいい音楽ではなく、切ないまでの魂の叫び。
この対談、そして志村くんの死から5年ほど経って、志村くんが生まれ育ったまさにその場所で、私は吉井さんとそのことについて語り合いました。
もう一つの富士山(その8) 李良枝 『富士山』に書いたように、富士吉田市下吉田は夭逝の天才を生む(ある意味命を奪う)不思議なトポスです。
そのことを聞いた吉井さんが、ちょっと怖そうな表情をしたのを思い出します。たぶん本気で死の匂いを嗅ぎつけたのでしょう。この対談のことも思い出したに違いありません。
その後、彼はそのトポスから逃げるように「復活」に向かっていきました。ロックと命。生と死。「復活」を遂げた吉井和哉はいったいどんな命との闘いを見せてくれるのでしょう。志村くんもきっと吉井さんの復活を喜んでいると思います。
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