イカれた◯◯…「イカれる」の語源(その1)
トランプ大統領が金正恩総書記のことを「イカれた若造」と批判したというニュースがありました。
英語でなんて言ったのかなと思ったら「sick puppy」とのこと。
「sick」を「イカれた」って訳したんですね。まあそういう訳になるか。体の病気というより頭の病気ってことでしょう。
sickは最近では「cool」と同じような意味で、つまりいい意味で「すげ〜!」とか「かっこいい!」という意味でも使われるといいますから、もしかするとほめたのかもしれませんね(笑)。トランプさんもかなりsickですから。
日本語の「イカれる」の語源について語ると、ちょっと長くなりますよ。正直よく分かってないんですよね。
まあ、「行く」+「れる」だというのは、おそらく間違いがないわけですが、外国人が日本語の学習で苦労する、そして私たち日本人も文法の勉強で苦労する、「れる」の意味の特定が難しいわけですよ。
そう、「れる」「られる」の文法的な意味は、可能・受身・自発・尊敬と四つもあるんです。なんで、その一見関係なさそうな四つの役割を兼任しているかについては、たしかこちらに書いていました。関係ないどころか関係大ありなんですね。
で、「行かれる」がなんで「sick」の意味になったのかということについて、四種類の説明をしてみましょう。
ええと、まずは可能から行きましょうか。つまり、「行かれる」の「れる」が可能の助動詞で、「イカれる」はもともと「行くことができる」、「行ける」という意味だったという説。
「いく」には、「逝く」という漢字が当たられるように、「死ぬ」という意味もありました。この世ではなく、あっちの世界に行くというわけですね。
「イカれている」人や物というのは、たしかにあっちの世界に行っちゃってる感じがしますよね。この世では反社会的だったり、役立たずだったり。
私たち普通の人(?)は、なかなか進んであっちの世界に行こうとはしません。行けない。それをいとも簡単にできてしまう人は「イカれた」人であります。
と、ここでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、そう、「イケてる」、すなわち「イケメン」の「イケ」も、たとえば「ここのメシはイケる」とか言う時の「イケる」と同様に、いい意味で(いい所へ)「行くことができる」という意味ですよね。
すなわち、「行かれる」と「行ける」は、両方とも「行くことができる」という意味でありながら、良い悪い両極端の評価を分業していることになります。
これなんか、まだ違う言葉だからいいけれど、古語の「いみじ」や「ゆゆし」、「あはれなり」のように、一つの語の中に両極端な意味を包含する場合もあります。現代語でも「やばい」なんかそうですよね。
英語の「terrific」などもそうですし、そうそう、トランプさんの使った「sick」もそういう性質を持っているわけですね。
だから、もしかすると、「sick puppy」とはモロに「ジョンウン、イケメン!」なのかもしれませんよ(笑)。いや、puppyは子犬だから「イケワン」か。
と、ここまで書いたところで、だいぶ長くなってしまったので、四つの説のうち残りの三つはまた後日書きます。できれば明日にでも。
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