『ビジネスで差がつく 論理アタマのつくり方』 平井基之 (ダイヤモンド社)
カンタンな中1数学だけでできる!
先日の忘年会でもこの本の出版祝いをいたしました。
著者の平井先生はカワイイ赤ちゃんとしっかりした奥様と一緒に参加してくれました。奥様は初のご出産を。そして旦那さんは初の出版を。なんともおめでたいことです。
平井先生はワタクシの元部下。学校でも活躍していただきましたが、独立後はさらに飛躍されました。もともと理系で東大に合格し、しかし在学中は教育を学び、そして教員生活ののち再び東大に挑戦。なんと今度は文系で合格しました。それだけでもすごすぎますね。
そうしたすごいキャリアをベースにして、今は押しも押されぬ「受験戦略家」として、受験生の指導に、そして言論活動に活躍しています。
数学の教員としてウチで働いている時から、私も彼といろいろな話をさせていただきました。今回の処女作は、ある意味その頃のセッションが一つの実を結んだような気がして、私は勝手に嬉しく思った次第です。
そう、私は国語の教員ですが、たとえば文学を教えることよりも、論理力を鍛えることに重きを置いてきました。その象徴が、中学で教材として使っている、出口汪先生の論理エンジンです。
出口先生も「論理こそ世界共通語」とおっしゃっています。その最も純粋な形が数学です。国語も数学も同じ論理という一つ上の次元でとらえるという意味では、「数学は言語だ」と力説する平井先生と出口先生は同じ考え方ですね。
当然のことながら、結果として、論理エンジンで強調されている「イコールの関係」「対立関係」「因果関係」と、この本で強調されている「同じ」「違う」「順番」は、ほぼ同じことになります。
論理学に限らず、全ての学問、いや私たちの認識のパターンの基本は、その三つに集約されます。この本は、中1の数学という、世界中のみんなが経験する(経験した)サンプルを使って、その基本を意識させてくれるという意味で、まずは非常に有用です。
そして、それを単なる学校の勉強や受験のレベルではなく、実生活、特にビジネスの現場にしっかり応用するべく解説されているところも素晴らしい。学校の勉強と実生活がなかなか結びつかないのが、日本の教育の問題点ですからね。
そういう意味で、やはり「受験は戦略」であり、そこから「人生における戦略」を学ぶべきだという平井先生の考え方には、私も大いに共鳴します。実際そういう話を生徒によくしていますし。
それらを私たちに納得させてるために、サンプルとして中1の数学を選んだのが正解でしたね。私のような数学苦手オジサンでも、さすがに中1の数学なら復習せずとも理解できます。
さらに、平井先生の素晴らしいところは、その易しい(優しい)サンプルを、さらに読者への愛情(教え子への愛情の延長でしょう)をもって、実に易しい(優しい)文章で説明してくれていることころです。
難しいことを易しく(優しく)語ることができる人が、本当に賢い人です。私も教育者として学ばせていただきました。
ところで、ワタクシの難解な?「モノ・コト論」で言いますと、論理や数学は最も純粋化された「コト」ということになります。
しかし、皆さん予感されるように、その最も人間的といえる、脳内ツールの極致であるはずの「純粋言語」が、自然界の「モノ」に直結している、すなわち「神」と直結しているところが面白い。私の言うところの「コトを窮めてモノに至る」という真理ですね。
おそらく私たち人類はそうして「シゴト(コトを為す)」を突き詰めて、宇宙の真理に近づこうとしているのでしょう。
数学史上の天才たち(最近では「ABC予想」を証明した望月新一さん)の多くが、理系・文系などというつまらない分類に収まりきらない人生を送っていることが象徴的ですね(そう言えばペレリマンはいまだにキノコ狩りしてるのかな?)。
まさに理系・文系の壁を超えている平井先生の今後の活躍に期待いたします。
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